「カナダ大会の羽生選手は、4回転を3回決めたものの、普段の実力からすると、一つ一つの技の完成度が高いとは言えませんでした。得意のトリプルアクセルも、ショートでは3点も加点がもらえる質の高いジャンプを決めましたが、フリーではあまり余裕がなかったですね。羽生選手のプログラムは、ジャンプ自体も難しいのですが、ジャンプの入り方も難しいんです。トリプルアクセルなど、過去に見たことのない入り方をしています。普通に跳べば、もっと軽々と素晴らしいジャンプを跳べるだろうにとは思いますが、高みを目指すのが羽生選手なんですね。このように、選手の個性が表れるのがフィギュアスケートの面白さでもあります。
今回はシリーズ初戦ですから、ここから完成度を上げてくるでしょう。完成度が上がれば無敵なのは間違いありません。また、何かの理由で完成度が上がらなかったときは、戦略家のオーサーコーチのこと、それなりの軌道修正をしてくるのではないでしょうか。
ただ、彼は次のオリンピックを見据えた挑戦をしている。ですから、今シーズンの結果だけで、プログラムに4回転を3回入れることの是非を問うことはできないと思います。それに競技である以上、結果も必要ですが、アスリートにとって、挑戦も大切です。羽生選手が今度どう考え、どういう演技を見せてくれるか、期待したいですね」
カナダ大会の後、33歳にして現役を続ける皇帝プルシェンコはロシアの通信社「Rスポーツ」に対して、パトリック・チャンの点数は信じられない(ほど高い)、とコメントしている。フィギュアスケートの勝ち方も一つではなく、アスリートの考え方に唯一の正解もない。羽生の挑戦が身を結ぶよう、ファンとしては応援するばかりだ。