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羽生結弦 ライバル対決敗北から見えた「4回転3回」跳ぶ意味

 シーズンが開幕し、今年も盛り上がりを見せるフィギュアスケート。先日行われたGPシリーズ第2戦・カナダ大会では、ソチ五輪金メダルの羽生結弦(20)と、元3年連続世界王者でソチ五輪銀メダルのパトリック・チャン(24)とのライバル対決が、国内外の大きな注目を集めた。羽生の超高難度プログラムと、チャンの完成度の高いプログラム。至高の対戦は、二人の個性の違いを見せつける戦いともなった。

 結果を確認しておくと、パトリック・チャンが271.14点で優勝、羽生は259.54点で2位。ショートプログラム(SP)で6位と出遅れた羽生は、フリースケーティング(FS)で4回転を3回決める鬼気迫る演技を見せたが、フリーだけの点数を見ても、チャンが190.33、羽生が186.29と、チャンに軍配が上がった。

 羽生の今シーズンのフリーは、安倍清明を演じる『SEIMEI』。2種類の4回転を3回、それも1回は後半に跳ぶという、超絶プログラムだ。後半の4回転は氷に手をつくも、3回の4回転を決めた羽生に対し、チャンは4回転1回。(予定では2回だったが、2回目が3回転になった)。また、4回転の次に難易度の高いトリプルアクセル(3回転半)を比較すると、羽生は後半に2回、チャンは前半に1回決めた。つまり「4回転3回、3回転半2回」の羽生に対し、「4回転1回、3回転半1回」のチャンの点数のほうが高いのだ。

 ジャンプだけを比較すると、なぜ羽生の点がチャンより低いのか、首をかしげたくなるかもしれない。理由の一つは「演技構成点」、いわゆる芸術点の差だ。フリーではチャン95.16、羽生88.94と、6点ほどの差がついている。世界一と言われるチャンのスケーティング技術は、ここでも高い評価を得た。

 二つ目は、ジャンプの質に対して加減点されるGOE(出来栄え点)の差だ。現行ルールでは、質の高いジャンプには加点され、一方、ジャンプを決めても質が低いと見なされれば、減点される。フリーのジャンプのGOEだけを比較すると、チャン11.73、羽生は一つ転倒があったことも影響し3.59。つまり、難易度は別として、チャンのほうが質の高いジャンプを跳んでいると評価されているわけだ。

 男子は、トップ選手の多くが4回転を2回跳ぶ時代へと突入しているが、「難易度」のみならず、「質」と「芸術性」の「総合力」で競うのがフィギュアスケート競技だということを、パトリック・チャンは改めて示したと言える。では、羽生の4回転3回の挑戦をどう考えればよいだろうか。フィギュアスケート関係者はこう語る。

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