ニセのマイナンバー収集行為も想定されるため、各店舗は「こういう名前の委託先企業からすかいらーくの名前の入った通知書が届くから」と従業員全員に周知徹底する作業を必死で行っているという。
中小企業を中心に、400の顧客を持つ「税理士法人ほはば」の前田興二・代表税理士が語る。
「番号の漏洩には罰則もあることから、リスクを気にする企業から『管理には、鍵のかけられる部屋を用意しなければいけないのか』とか、『パーティションはどんなものを買えばいいのか』といった相談があります。
実際は『机の上に番号が書かれた紙を積んで放置してはいけない』『パソコン画面が他者から容易に見られないような角度になっていればよい』という程度で十分なのに、法律を拡大解釈して不安が増大してしまい、混乱を招いているのです」(前田氏)
誤解が誤解を生み、企業の総務担当者の間ではデマも飛び交っている。たとえば、「マイナンバーを暗号化すれば、個人情報として扱わなくてよい」というものだ。
税理士向けにクラウドシステムを提供するアカウンティング・サース・ジャパン社の中尾健一氏は、「法律で明言されているわけではないですが、暗号化した状態でも、マイナンバーと変わらず厳密な管理が必要というのが正しい考え方です」と語る。2016年から本格的なマイナンバー収集が始まる。混乱はまだ拡大しそうだ。
文■岸川貴文(ジャーナリスト)
※SAPIO2015年12月号