しかし、官主導による電機業界再編が進んでいくことに懸念を抱く向きもある。経済誌『月刊BOSS』編集委員の関慎夫氏が話す。
「そもそも革新機構は最先端の技術を守るためにつくったファンドなので、シャープの液晶技術だけに高い値段をつけて買うなら分かります。でも、残った白物家電を東芝と一緒にさせようとか、その他の事業で統合や再編まで仕掛けるのは、お上のやることではありません。
安倍首相が携帯料金の値下げを要請したこともそうですし、最近はあまりにも国が民間に口を出し過ぎだと思います。このままだと民間企業の自由な競争原理が働かなくなってしまう恐れもあります」
前出の安田氏は「国が株主になるのは悪いことではない」としたうえで、次のような見解を述べる。
「問題は『出資者が誰か』よりも『誰が経営するか』のほうが大事。日本の場合、同じような規模の会社が一緒になったとき、主導権争いが激しくなってうまくいかないケースが多々あります。半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスもそうですし、米企業に買収されたエルピーダメモリも裏ではメーカー間の争いがあったと聞きます。
そんな時、国が実力のあるリーダーを決めれば納得もされやすいでしょう。電機業界に限らず海外メーカーとの競争が避けられない中、上場して外部監査もしっかりしている企業ならば、国の支援を得ながら方向性を探るのも選択肢のひとつだと思います」
シャープの再建策がどんな道筋を辿るのかはまだ見えてこないが、早急に利益を生み出すビジネスモデルを構築しなければ、莫大な支援額も無駄になるだけだろう。