「ぼくは育休を取る前は、家事や育児を自分なりにやっていたつもりだったんですが、妻のことを全然理解していなかったんです。世の中は結果的に、妻に負担がかかる社会になっています。ぼくが育休を取ったことでようやく妻と対等になれたのかなと思います」(山田さん)

 夫が育休を取ることのメリットは、まず山田さんに代表されるように家事力がつくこと。これが、将来の介護のトレーニングになるという。NPO法人・ファザーリング・ジャパン代表の安藤哲也さんはこう語る。

「育児と介護は、やることはだいたい似ています。ご飯を作って食べさせて、おむつを替えてお風呂に入れて。相手が子供か高齢者か違うだけです。今までは育児も介護も女性の仕事とされてきましたが、少子化が進んだ今ではそうはいきません。男性が親や妻の介護をする時代が確実に来ます。そのときに家事が何もできないでは困ります」

 また、家庭内だけでなく仕事のスキルも上がると、ダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜さんは言う。

「育児は時間をいかに効率的に使うかなので、仕事の上でも業務効率の向上を図れます。話すことのできない赤ちゃんの気持ちをくみ取ることで、コミュニケーション能力もアップします。ビジネスの現場で使えることが多いんです」

 イクメンや育休がパフォーマンスとして取られる社会である限り、結局、女性に重荷を背負わせる社会が続く。そうした社会を変えなければいけない。

「政府は男の育休取得率を2032年に13%まで上げようとしていますが、このままでは難しい。男性はもちろんですが、女性が声を上げていくべきだと思います。

 子供たちを健やかに育てるには、その母親、そして父親が無理なく子育てできる環境にしなければならない。そうすることで、シングルマザーやシングルファザーも働きやすく休みやすい社会になります」(安藤さん)

※女性セブン2016年3月24日号

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