治療に際し、患者には事前にBPAを点滴で投与する。中性子が照射される金属製の丸い器具を、腫瘍部分に密着させる。エネルギーの低い中性子を照射すると、がん細胞に取り込まれたBPAと、中性子が核反応を起こし、粒子線が発生して、がん細胞を死滅させる。腫瘍の大きさにもよるが、照射時間は30分程度で、その間は痛みや熱さなどはまったく感じない。大半が1回の治療で終了となる。
「治療できる腫瘍は、皮膚から6.5センチ以内の体表に近いものが対象となります。BPAが腫瘍に集積するかどうかは、事前に施行されるPET(陽電子放射断層撮影)で確認できます。今後装置の利用実験を行ない、1年後を目指して悪性黒色腫の治験も開始する予定です」(伊丹放射線科長)
悪性黒色腫は、BPAがよく集積するため、BNCTが高い効果を示す。BNCTは、悪性黒色腫だけでなく、手術が難しい頭頸部(とうけいぶ)腫瘍や放射線治療後に再発した頭頸部腫瘍などで劇的な効果がある。今後その治療効果や対象疾患の広がりなどに期待がかかる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号