そして、同社はこの流れの決定打とも言える本を近々発売する。元アイドルで脱原発の闘士だったが、今は左派活動を辞めた千葉麗子氏の『さよならパヨク』だ。昨年11月、ネットの一部を揺るがした「ぱよぱよちーん騒動」の内幕を千葉氏が記すのではないだろうか。
この騒動は、かつて千葉氏とともに左派活動をやっていた男性が、「人種差別主義者」と認定した人たちの個人情報をネットに拡散したことから反感を買い、逆に自分の身元を突き止められ、会社を辞めた騒動を指す。この際、千葉氏と男性の過去のツイッターでのやり取りが特定に大いに寄与した。
ぱよぱよちーんとは、男性が千葉氏に「おはよう」と言うために使っていた挨拶だ。語感の独特さから妙なウケ方をし、「サヨク」のことを「パヨク」と呼ぶようになった。
千葉氏は男性とは袂を分かち、「パヨク」から距離を置いたが、「すべてを話す」と宣言しているのだから、ネットでは同書をめぐり論争が発生中。不買運動に応援活動、両方が入り乱れてメディアもニュース化せざるを得なくなり、さらに注目を集めることだろう。それにしてもどんな批判が来ようが蛙の面に小便的な青林堂の担当者、精神強いな。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2016年4月8日号