退役軍人は職務上、地域に跨がるネットワークを持ち、武器や装備にアクセスしやすい立場にある。
最悪の場合、中国で退役軍人による武装デモが地域を跨いで起こるかもしれない。成都軍区を掌握し、「2個集団軍が自分の掌中にある」と豪語した末に失脚させられた元重慶市トップ・薄熙来の事件は、そうした危機感が決して杞憂ではないことを、習近平に思い知らせた。
超大国だった米国の力が相対的に低下する中、「中国の夢」を掲げて大国化をめざし、東シナ海や南シナ海、台湾問題などで米軍と対峙するシナリオを描く習近平は、米国の統合軍や作戦形態をモデルにして軍の再組織化を急いでいるとみられる。
30万人の人員削減を習近平は「軍縮である」と強調するが、実態は軍の精鋭化に他ならない。
周辺に「戦い、勝利する軍隊」が登場することは日本にとっても大きなチャレンジとなる。新組織のカウンターパートを確認し、平時から中国と安定した関係を構築する努力が必要だ。
●ますだ・まさゆき/1976年広島県生まれ。2003年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。米国防省のシンクタンクであるダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センター客員教授や東西センター客員研究員等を歴任。専門は現代中国の外交・安全保障政策、アジア太平洋の国際関係。
※SAPIO2016年6月号