菅野氏も同様の見方をしている。

「日本会議というのは得体の知れない巨大組織というイメージで取材を始めましたが、資料を読み込んでいくと、むしろ70年代安保の頃から愚直に講演会や勉強会、署名活動など、保守系団体としての地道な運動を続けてきた人たちだということがわかってきた」

 保守系団体、ネット右翼などに詳しい著述家の古谷経衡氏も、「政権全体への影響力でいえば、選挙のたびに600万~700万票を集める創価学会の方が大きいでしょう。安倍政権にメンバーが多いのは、全国に支部がある保守組織だからではないでしょうか」と評した。

 一方で、そういった日本会議に関しての“率直な見方”を記した『日本会議の研究』は、インターネットでは批判の嵐に晒され、大炎上を巻き起こしている。そうなるとバックに巨大な支持層を抱えているようにも思える。実際、日本会議の関連団体は、憲法改正に向けての署名集めで、すでに700万人分を集めたと発表している。

 菅野氏は『日本会議の研究』の奥付に自身の住所と携帯電話番号を掲載している。著書についての抗議電話の本数は一件だけだったという。

「戦前の本は著者の連絡先を書いたので私もそれに倣って掲載しましたが、お叱りの電話はほぼゼロです」(菅野氏)

 日本会議に一連の騒動について取材を申し込むと、「(扶桑社に抗議した理由などの詳細は)相手の回答を待って明らかにする」というのみ。どこまでいっても正体の掴めない組織──外から見える巨像は、虚像なのだろうか。今はまだわからない。

※週刊ポスト2016年5月27日号

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