原宿ツーリストインフォメーションセンターの小川雄司氏
日用品から高級ブランド品まで、様々なものを大量に購入する「爆買い」が訪日外国人の消費動向トレンドだったのはすでに昔。最近は、モノではなく「体験」を求める方向に変化しているといわれている。旅行代理店H.I.S.が解説した訪日客専門店「原宿ツーリストインフォメーション」(以下TIC)を作家の山下柚実氏が訪れ、その変化についてレポートする。
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「しばらく爆買いは続くでしょう。ただ、中国人観光客はビザ緩和の影響により、年々個人旅行の観光客も増えてきて、嗜好も少しずつ変化してきているようです。中国人の日本での楽しみ方、関心の対象が変わってきています」
とTIC責任者・小川雄司氏(37)は言い、訪日客むけに配っているという英語のチラシを見せてくれた。
「こちらは私たちがオリジナルで企画した、今一番人気の商品です」
チラシには「RAMEN EXPERIENCE(ラーメンづくり体験)」という文字が躍っている。
「外国の方々にラーメンを味わっていただくだけでなく、厨房の中に入り、自ら麺を茹でて『湯切り』をしたりチャーシューをガスバーナーで炙ったり。さらにお好みの具をトッピングして自作したラーメンを味わっていただくという体験ツアーです。料金は1人2500円ですが、月に50件以上の申し込みがあります」
「湯切り」ツアーとは驚きだ。外国人客たちはラーメンの味に興味を持っていただけではなく、厨房の「湯切り」という動作も気になっていたのか。日本人がまったく気付かないところに関心の対象があり、驚くような場所に「観光資源」が潜んでいる、という証しだろう。
「ラーメンだけではありません。お寿司を握る体験ツアー、刀を構えてサムライになり、礼儀・作法などを学ぶ体験ツアーもあります。また、ここ原宿はファッションの街ですから、西洋人形のようなロリータファッションやアイドル鑑賞体験ができるツアーなど様々な商品をご用意しています」
京都や富士山見物、買い物や名所旧跡観光だけではなく、日本の「今」をリアルに体験したい。そんな欲求が膨らんでいる。新潮流は「見物」や「モノ」より「コト」にありそうだ。
「以前、竹下通りを4時間ほど観察したら5千人の外国人が歩いていました。日本人よりずっと多かったんです」と小川氏も目を丸くする原宿。駅前にTICがオープンしたのは2015年7月。同社の訪日観光客専門店は東日本地区では初の試みだという。まだ一年に満たないが、開店の翌月は3500名の外国人が押し寄せ、月平均2300名が利用する活況ぶり。