◆国はこれ以上お金をかけたくない
「要するに国はこれ以上医療や介護にお金をかけられなくなったということです。政府は重症患者の集中治療にあたる高度急性期病床を約19万床から13万床に、手術などが必要な患者のための急性期病床を約58万床から40万床に、長期的な治療が必要な慢性期病床を約35万床から24万床に減らせるとしています。病院ではなく、なるべく自宅でケアを受けさせる方針なのです」
本誌前号では、高額な有料老人ホームに入れない高齢者の中で、本来リハビリなどを目的とした介護老人保険施設(老健)を転々としながら、安く入れる特別養護老人ホームの空きを待つ人が急増している実態を指摘した。
2025年にはさらに深刻な事態が待ち受けている。全国の介護入所施設の定員は現在約133万床だが、その水準の介護体制を維持するには、2025年までに約43万床増やさなければならない(国際医療福祉大学大学院・高橋泰教授の試算)。しかし、武藤氏は、「施設も減っていく」と指摘する。
「たとえば、医療機関が運営し、重度の要介護者を受け入れられる『介護療養型医療施設』は2018年をもって廃止される予定です。政府の方針はあくまで在宅介護を増やしていくこと。現在、病院や診療所以外で亡くなる方は全体の約2割ですが、これが2025年には4割程度になっていると思われます」
問題は、自宅では十分な医療や介護を受けられない可能性が高いということである。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号