一時期、『GTO』という熱血教師のドラマが流行ったことがありましたが、確かにおもしろかった。生徒は「あんな先生がいてくれたら……」と思うかもしれませんが、私ら教師からすれば「こんな生徒ばっかりだったら楽なのにな」と思いますよね。話せばわかってくれるし、まず、どの子も学校に来てますもんね。実際の教育現場は、もっと過酷です。退学覚悟で学校に来なくなってしまった生徒は、そこから更生させるのはなかなか難しい。

 体罰を悪だと決めつけると、先生もどんどん萎縮していきます。その先にあるのは、問題のある子のスポイルですよ。そういう子が街でタバコを吸っていても、見て見ない振りをするようになる。タバコぐらいなら殴ってでもやめさせれば、まだ間に合うのにね。

 体罰はないにこしたことはない。だからといって、何が何でも禁止にすべきではないですよ。これ以上言うことを聞かなかったら叩くよ、という部分を残しておかないと抑止力にならないですもん。それに、叩いてもこの先生は本気なんだと伝われば、生徒は理解してくれます。優しさや思いやり、つまりは“母性”に溢れる世の中だからこそ、時には“父性”をしっかりと見せなければならない。体罰よりも残酷なのは、こいつはダメだと簡単にあきらめることじゃないですか。

【PROFILE】野々村直通(ののむら・なおみち)/1951年、島根県生まれ。広島大学教育学部卒。島根県の開星高校野球部を監督として9回、甲子園に導く。美術教師を務めていたことから「山陰のピカソ」の異名を持つ。2012年に定年退職。著書に『やくざ監督と呼ばれて』など。

●取材・構成 /中村計(ノンフィクションライター)

※SAPIO2016年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン