暴力団一覧

【暴力団】に関するニュースを集めたページです。

分裂から7年を迎えようとしているが…(神戸山口組の井上邦雄組長/時事通信フォト)
山口組の分裂抗争がついに終結へ【後編】情報戦の舞台はSNSやYouTubeに
 日本最大の暴力団・山口組が分裂してから7年を迎えようとするなか、突如、六代目山口組が敵対勢力である神戸山口組のトップ・井上邦雄組長への襲撃を始めた。抗争のフェーズが一段階上がり、民間人が恐怖に脅える事態を引き起こしてまで、彼らが狙うものはなにか。暴力団取材の第一人者が深層に迫った。【前後編の後編。前編から読む】 * * * 暴力団社会を見ても、終結に向かおうとする動きが見え隠れする。実話系週刊誌で報じられたように、福岡県久留米市に本部を置く道仁会の小林哲治会長が、井上組長と面談しているのだ。警察サイドの情報を詳細に書くと、すぐさま犯人探しが始まるので関係者としか書けないが、どうやら両者は2度、もしくは3度会談をしたらしい。 道仁会は山口組に対して、一歩も引かない暴力性を誇る武闘派団体である。山口組分裂の直後、組織を割って出た神戸側はもちろん、六代目側とも接触しないと宣言したこともあり、警察は反山口組の最右翼と考えている。その小林会長が神戸山口組のトップと会談しているのだから、茶飲み話であるはずがない。若い衆に道を付け、抗争終結を打診しているとみるのが妥当だ。 警察関係者も、密室で行なわれている両者の会談がどうなっているか、具体的な内容は分からないという。 もちろん神戸山口組が腹をくくり、乾坤一擲のヒットマンが六代目山口組の有力者を立て続けに殺害、局面をひっくり返す可能性もある。「これまで何度も大事な局面はあった。捨て身でトップ、ナンバー2、ナンバー3の命を取れば戦況は変わるかもしれない。しかし、もはや口でなにを言っても空々しい。第一、いまさらヤクザ同士が争っている時代ではない。これ以上抗争を続ければ、警察だけが得をし、ヤクザの終焉が早まるだけ」(前出の指定暴力団幹部) 暴力団社会では、冷淡な声が圧倒的だ。SNSで繰り広げられる情報戦 山口組分裂抗争は、六代目山口組VS神戸山口組の二極対立だけではない。 前述した絆會は神戸山口組から離脱した第三勢力である。また山口組分裂の首謀者である岡山の池田組・池田孝志組長も神戸山口組を離脱し、第四勢力を形成している。絆會と池田組は手を組んでおり、池田組長は織田代表を信頼しているという。池田組は若頭を殺害され、後任の若頭もまた銃撃されているが、いっこうに報復する気配がない。絆會は池田組の行動部隊なのかもしれない。 6月1日、六代目山口組が池田組に対する攻撃中止を通達したため、マスコミの一部は「池田組長が引退を決意」と報道した。よく考えればあり得ない情報だった。池田組長が身を引けば、絆會の立場が宙に浮く。そんな勝手をするはずがない。 絆會の織田代表とて、山口組に復帰する可能性はある。しかしマスコミを集めて記者会見を開催、親分の井上組長の秘密を暴露した織田代表はひどく警戒されている。復帰出来ても針のむしろで、ならばこのまま膠着状態を維持したいはずだ。 ただし、まるっきりのガセ情報だったとも思えない。六代目山口組が池田組への攻撃中止命令を出したのは事実だからだ。ならばその裏でなんらかの動きがあったのだろう。これまた密室でのやりとりを、状況から推理する他ないが、池田組長が引退を考える状況はひとつしかない。古巣の神戸山口組が解散した時だ。 池田組は神戸山口組から、円満に脱退している。井上組長への気持ちが冷めていても、水面下で神戸側の直参とは話をしているはずだ。もし本当に神戸山口組の井上組長が引退する話があったとする。そうなれば、さすがに池田組長も身の振り方を再考するのではないか。 神戸側の解散から抗争終結に繋げたいのは、六代目山口組に他ならない。池田組長の引退を報じた媒体は、六代目山口組の情報操作にまんまと乗せられたと考えていい。 実話系週刊誌は六代目側の思惑に乗らなかった。彼らは山口組から情報を取るため、それぞれパイプを持っているので、当然、一連の情報を掴んでいた。彼らは誌面を充実させるため、時と場合によって暴力団側と共同歩調を取る。具体的には彼らが望む記事を掲載する。私は暴力団専門誌の編集長として、長く蜜月の渦中にいた。その様子が手に取るように見える。 しかし、実話誌は暴力団側のいいなりにはならない。六代目山口組であっても、誌面を好き勝手に改変できない。ところが令和になって暴力団は新しい武器を手に入れた。それが暴力団情報を配信するYouTuberであり、Twitterを初めとするSNSだ。 最近では新しく知り合った暴力団員から「記事は読まないけど、配信は好きでよく観ます」と言われる。活字世代としては面食らうばかりだ。噂の拡散力は、もはや実話誌より上かもしれない。 自身に都合のいい噂を広めるため、または相手を誘導するため、暴力団はひどくデフォルメされた情報を配信者に提供する。彼らはまるで記者クラブメディアが警察情報を垂れ流すかのごとく、再生回数を稼ぐため暴力団からの情報を生のまま配信する。 暴力団の活動が法律で大きく規制されるようになった現在、山口組のようなマンモス暴力団はデメリットだけを増大させた。下部団体の抗争でトップが逮捕される危険を常にはらみ、かつてのように多勢に無勢で中小団体を蹂躙できない。昭和の体質のままでは結局ジリ貧で、内部抗争を続ければさらに求心力を失っていく。 抗争を総括する日はそう遠くない。(了。前編から読む)【プロフィール】鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.21 15:59
週刊ポスト
分裂抗争が最終局面に(六代目山口組の司忍組長/時事通信フォト)
山口組の分裂抗争がついに終結へ【前編】白昼の住宅街に響いた銃声の意味
 日本最大の暴力団・山口組が分裂してから7年を迎えようとするなか、突如、六代目山口組が敵対勢力、それもトップへの襲撃を始めた。抗争のフェーズが一段階上がり、民間人が恐怖に脅える事態を引き起こしてまで、彼らが狙うものはなにか。暴力団取材の第一人者が深層に迫った。【前後編の前編】 * * * 神戸山口組のトップ・井上邦雄組長は激怒したという。 6月5日午後2時20分、神戸市内の自宅に銃弾が撃ち込まれたからだ。六代目山口組の中核組織・弘道会系のヒットマンは、近くに停まっていた警察車両にもかまわず、ワンボックスカーを玄関前に横付けし、車の屋根に登って住居内部を窺いつつ、合計17発の銃弾を放った。複数の拳銃がなければ短時間にこれだけの銃撃はできない。 実行犯が所持していたのは回転式拳銃だ。マガジンの交換で、立て続けに連射できるオートマチック式とは違い、数発撃ち終わる度に手作業で排莢し、弾丸を詰め直さねばならない。射撃場ならなんなく出来る作業でも、現場は神戸の住宅街である。目撃者もいるだろうし、連続して銃声が響けばすぐ警察が駆けつける。どうみても逮捕覚悟の犯行だった。実行犯はパトロールの警官を振り切り、近くの交番に出頭した。 こうした事件を暴力団たちは「ガラス割り」と呼ぶ。半端な暴力を揶揄する隠語だが、事務所や住居などの立ち回り先を銃撃する器物損壊事件は、後のマスコミ報道とセットになっており、広く報道されて初めて仕事として完結する。かつて人気のない早朝に発砲したため新聞報道されず、翌日、再び銃弾を撃ち込んだ組織もあった。ここまで大胆、かつ執拗に発砲し、大々的に報道されたのだから暴力団社会においては相応に見事な仕事だ。銃器を使った犯行は発射罪などが加重され刑期が重い。今回の場合、軽くみても10年以上の懲役になるだろう。 ガラス割りは単なる脅しに過ぎない。が、銃弾はガラスと同時に、暴力団のメンツにヒビを入れる。やられたら、やりかえさねばヤクザがすたる。報復せずに沈黙するなら、もはや暴力団とはいえないだろう。 六代目山口組の攻撃は立て続けに行なわれた。 翌日6月6日の午後9時50分ごろ、今度は神戸市内にある絆會・織田絆誠代表の自宅に軽乗用車が突っ込んだ。実行犯は六代目山口組関係者とみられている。この犯行もマスコミを利用した公開果たし状と考えれば十分な効果がある。実際、この事件もまたマスコミによって大々的に報道された。連日の犯行で過熱した報道陣は喧嘩を煽り立て、六代目山口組は最小の暴力で最大の効果をあげたことになる。 かつて織田代表は“第三の山口組”と呼ばれた任侠山口組を立ちあげた後、神戸山口組のヒットマンに襲撃され、自宅付近の路上でボディガードを撃ち殺されている。しかし六代目山口組が織田代表を狙って暴力を行使したのは、今回が初めてだった。狙うのは幹部の命 当事者たちはどう考えているのか? 旧知の指定暴力団幹部に2つの事件に関する見解を質問した。「(織田代表宅へ)車が突っ込んだのはともかく、井上組長宅への発砲は道具(拳銃)を使っている以上、誰かが命を落とす可能性はあった。六代目山口組内に事件容認の空気があるはず。それでもがっちりガードされると、なかなか必殺の仕事は実行出来ない。殺せないからガラス割りなのか、最後通告の趣旨だったのかは分からない。手榴弾を持って自爆テロでもすれば殺しも可能だろうが、ヤクザには親と子の建前がある。殺してこいと命令できても、死んでこいとは言えない。これが抗争の最終ラインだろう」 暴力団は上層部の逮捕を回避するため、直接の指示を仰がず、傘下団体が勝手に抗争事件を起こす建前を崩さない。しかし実際は上層部が黙認しており、その心情を忖度して若い衆が走る。子分たちは暴力事件の実行犯を担って体を懸ける(※襲撃して逃亡、もしくは服役すること。反撃を受け、負傷や命を落とすことの2つのケースを指す)が、親分は教唆での逮捕を覚悟し、腹を括れるかで我が身を懸ける。組織が武闘派たり得るかどうかは、ひとえに上層部の胆力に依存する。 これまでの経緯を考えれば、六代目山口組が抗争を終結させようと意図し、事件を頻発させているのは間違いない。なかでも弘道会は暴力事件を積み重ね、神戸山口組にプレッシャーをかけ続けている。が、もう丸7年間、身内同士の対立を続けている。これ以上威嚇のような警告を続けても、神戸山口組を追い込めないだろう。今後、抗争が激化する可能性は十分にある。幹部の命を狙った銃撃事件が立て続けに起きてもおかしくはない。鍵を握る井上組長の決断 実際、山口組の分裂抗争は最終局面に突入したようである。六代目山口組・司忍組長との親子盃を反故にして離脱、神戸山口組を結成した面々にとっては正念場だ。なにしろ六代目山口組は、井上組長宅への銃撃をはじめ、引退した組長たちをのぞき、分裂の首謀者すべてに暴力を行使している。 抗争事件は相手を殺し、その仕返しに報復が実行され、暴力的衝突が連鎖する状態を指す。しかし現実的には六代目山口組ばかり事件を起こしており、もう長らく抗争の体をなしていない。あまりに神戸側の報復がないので、六代目側の組員は抗争の渦中にある自覚を持てないだろう。 昨年末、関連施設を相次いで銃撃された神戸山口組の寺岡修若頭(侠友会会長)は、2月、再び六代目側の攻撃を受けた。 5月8日には大阪府豊中市にある宅見組・入江禎組長の自宅に車が突っ込んでいる。2人は神戸山口組の中心メンバーだが、旗揚げ以降、一貫して抗争事件に消極的だ。井上組長を担ぎ上げ、若い衆を巻き込んだ責任があるので、そう簡単に引退はできない。ただし、井上組長が幕引きを決意すれば話は別だ。最後まで組織の行く末を見届ければ、身を引けるだろう。 だから山口組の分裂抗争が終結するかどうかは、ひとえに井上組長の決断に懸かっている。井上組長が組織を解散し、六代目側に詫びれば、おそらく山口組の分裂抗争は終結する。 六代目山口組の司組長は80歳という年齢からは考えられないほどパワフルでも、ナンバー2の高山清司若頭には健康面での不安が拭えない。山口組は創設から100年の節目に分裂し、これまで積み重ねてきた暴力的威嚇力を毀損し続けてきた。彼らが戦っているのはかつての身内であり、分身を叩いているに等しい。ここまで勢力に差が出れば、もはや抗争を継続する意義も薄い。(後編に続く)【プロフィール】鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.21 15:58
週刊ポスト
夜の街で働く女性たちにも大好評の特製牛丼(イメージ)
夜の街は客足が戻る店も 元組長が働く女性のために作る絶品まかない牛丼
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回はコロナ禍で客足が戻り始めた夜の街の店で、暴力団元組長が振る舞っているというまかない牛丼について。 * * *「俺の作るご飯は美味しいって女の子たちも言うからね」と言って暴力団の元組長が見せてくれたのは、底の深いフライパンいっぱいに作られた牛丼の写真だ。若い頃、組事務所のまかない当番で料理の腕を磨いただけあって、薄切りの牛肉は煮汁が程よくしみ込み、肉の間にのぞく玉ねぎはしんなりと白く透きとおって、見るからに美味しそうだ。 コロナ禍の緊急事態宣言や自粛要請によって様子がすっかり変わったという組事務所では、組員たちの出入りが少なくなり、「以前のように、事務所で一緒に鍋を囲んでということはなくなった」という。 だが彼が関係する夜の街の店では客足が戻り始め、働いている女の子たちが忙しくなってきたようだ。コロナで営業自粛を余議なくされていた時は、収入がなくなった彼女たちのために、元組長が時々、店の厨房で食事を作っていたが、今は出勤してきた彼女たちの腹ごしらえのため、時間のある時に厨房に立っているというのだ。「うちの若いヤツが『あそこの組の組長は、車で店の女の子たちを送っているんですよ』と驚いたように言うからさ、『うちの組は、元組長が女の子のまかないを作ってるよ』と言ってやったら、『そうでした!』と大笑いになった」と明るい。「そう笑う若いヤツらも食べたがる」というレシピは至って簡単だ。「組の当番では、さっさっと作れるものでなきゃいけないからね」。「今日は牛肉の薄切りが500gなので、玉ねぎは2~3個。これを薄切りにしておく」 当番の時に用意していた肉の量は比べものにならないぐらい多く、若い者たちには、某有名牛丼チェーン店でいえば、牛肉が約170gある特盛ぐらいはあったようだ。女の子たちが食べるのはせいぜい並盛り約90gか小盛約70g程度、作る鍋もかなりの大きさがあったらしい。 牛丼のレシピでよくあるのは、まず熱した鍋かフライパンにサラダ油をひき、切った玉ねぎを中火で炒める。先に玉ねぎを炒めることで、玉ねぎの甘さを引き出すのだが、元組長はそんなことはしない。「鍋に200ccの水を入れ、そこに玉ねぎを入れて中火で煮る。時短と手間を省いたレシピだが、玉ねぎは水から煮ることで柔らかくなるんでね」 「用意する味付け調味料は、醤油70cc、みりん100cc、お酒300cc、白だし大さじ1、砂糖大さじ2.5。これらを混ぜてタレを作っておく」 ネットで公開されている人気の牛丼レシピは、先に調味料を入れた煮汁を作り、そこに玉ねぎを入れて煮るというものだが、元組長はそれもしない。では、玉ねぎを煮ている鍋に調味料を入れるのかと思ったが、それも違うという。「玉ねぎを入れて沸騰したら肉を入れる。そして、そこに作ったタレを混ぜ、キッチンぺーパーを上にのせて、弱火で7~8分煮込めば完成」という超簡単レシピだ。キッチンペーパーを使うのは、それが落とし蓋とアク取りという2つの役目を果たすからで、肉から出るアクをいちいち細かく取らずに済み手間いらずなのだ。スープ代わりに作るインスタント麺 お好みで紅ショウガを加えれば、チェーン店の牛丼よりも高級感が漂うつややかな牛丼が出来上がる。当番レシピは牛丼なら牛丼だけ、カレーならカレーだけ。おかずはいくつも作らないが、味噌汁だけは作るという。「ある組の教えで、組事務所ではご飯に味噌汁、漬物だけは用意してたんでね。だけど、今の女の子たちは味噌汁よりスープの方が好きらしい」という。最恐軍団と恐れられた組の教えも、女の子たちの好みには敵わないらしい。 スープ代わりに作るのはマルちゃん正麺のラーメンだ。「マルちゃん正麺はヤバいくらい旨い」という元組長が用意したのは、醤油味。だがマルちゃん正麺なら、何味でも構わないという。なぜなら「袋の中のスープは使わない」からだ。「味付けに使うのは味の素と創味シャンタンのみ」と言い切る。当番レシピの味付けに万能調味料は欠かせない。「その方が味に間違いがなく、しっかりした味になる。当番で不味いモノは出せないんでね。ヤクザも偉くなれば金もでき、旨いモノが食べれるようになる。あちこちの店に行けるようになれば、舌も肥えてくるが、若いうちはそうもいかない。腹を満たせることが一番だが、作るからには食べた瞬間に旨い、美味しいと言わせたくなるもんだ。そこで必要なのが万能調味料だ」 適当な量のお湯を沸かして麺を茹でたら、そこに味の素と創味シャンタンを投入するのだが、その分量がすごい。「だいたい瓶の半分ほどかな」。「ラーメン屋なんて、スープにこだわりがある店以外は、どこも万能調味料がバンバン入っていると思ったほうがいい。日本人の舌はその味に慣れてきちゃってるんでね。万能調味料の旨みが美味しいと感じるんだよ。そこに細切りの白髪ネギでも上にのっけてやれば、美味しいスープの出来上り」 味付けに使う調味料は、ケチケチせず盛大に入れるのが当番レシピらしい。例えば玉子とじうどんの場合、味付けに使うのは白だしとおろし生姜。「おろし生姜はチューブのもので構わない。2~3人前でチューブの半分は入れるね。それぐらい入れると生姜が利いて旨くなる」。 万能調味料は絶対だと言いながら、元組長は牛丼や玉子とじうどんには使わない。「和食はやっぱり白だしだ。これさえあれば和食は旨くなる」。そこには、元組長なりの当番レシピに込められたこだわりがあるらしい。
2022.06.11 16:00
NEWSポストセブン
分裂抗争が最終局面に(六代目山口組の司忍組長/時事通信フォト)
井上邦雄組長・織田絆誠代表を相次いで襲撃 六代目山口組が待ち望む反撃、そして抗争激化へ
 6月6日午後9時50分ごろ、神戸市内にある指定暴力団・絆會の織田絆誠代表の自宅に軽乗用車が後ろから突っ込んだ。絆會は六代目山口組から分裂した神戸山口組から再分裂した組織で、当初「任侠山口組」と称していたが、現在は「山口組」の看板を下ろし、分裂抗争からも距離を置いていた。なぜ事件は起きたのか、全国紙社会部記者が語る。「ここにきて六代目山口組が敵対勢力、しかも組長・幹部クラスへの襲撃事件を多発させています。5月8日、神戸山口組ナンバー2の入江禎・宅見組組長の自宅に車両特攻が行なわれ、事件前日の6月5日には、神戸山口組トップの井上邦雄組長宅への発砲事件が発生したばかりでした。井上組長宅には10発以上の銃弾が発射されたとみられています。今回の織田代表宅への車両特攻も30代の男が出頭していて、六代目山口組関係者と見て取り調べを進めています」 2017年9月、神戸側は織田代表の乗った車を襲撃し、白昼堂々ボディガードを射殺している。一方で、六代目側は絆會側と組員同士の抗争こそあれど、織田代表を狙った抗争事件は今回が初めてだった。暴力団に詳しいフリーライターの鈴木智彦氏が六代目側の行動を分析する。「暴力団組員は上層部の意思を忖度して動きます。裁判で教唆にならないよう明確な指示はしませんが、抗争になれば上が黙認しない暴力事件などあり得ません。六代目山口組の中に、絆會に制裁を加えよという空気があるから事件が起きた。それは間違いない。軽自動車をバックで突っ込ませた程度では、門扉が破損する程度の損害しかなく、実質的な制裁としての効果はほぼゼロです。 しかし、絆會が敵であり、神戸山口組と同様の裏切り者で、『山口組』の看板を下ろしても許すつもりはないという意思表示にはなる。彼らはこうしてマスコミが大々的に報道するのも計算し、事件を起こしています。六代目山口組は今年3月から神戸山口組から離脱した池田組への襲撃を再開していた。6月1日に六代目山口組側から『池田組には手を出すな』という緊急通達が出て、一時休戦になっています。六代目山口組は池田組を解散に追い込んで、抗争終結に繋げたいのでしょう。絆會はその池田組と共同戦線を張っている。絆會トップが攻撃されたのだから、池田組への圧力は続いているとみていい」 今年の8月で分裂抗争から丸7年が経つ。警察庁の調査によると、2021年末での構成員と準構成員の合計は六代目山口組が8500人、神戸山口組は1000人、絆會は230人。人数の差は大きいものの、いずれの組も資金力はあると見られている。依然、今回の六代目山口組の襲撃に対して、報復を起こす能力はあるだろう。「六代目山口組が挑発のような小競り合いを繰り返すのは、相手のメンツを潰すことで反撃を誘っているのかもしれません。六代目山口組としては、あえて反撃を受けることで、さらなる襲撃事件を起こしやすくなる。実行犯が逮捕されても、個人的な怨恨だったと主張できるからです。暴力団が恐れているのは警察の捜査が上層部に及ぶこと。六代目山口組もトップの司忍組長や高山清司若頭が逮捕されるような事態は絶対に回避したい。そのためには山口組のために動いたのではなく、個人的な恨みを晴らしたのだという建前が必要になる。今回の一連の襲撃事件で六代目山口組に抗争を継続する強い意思があるのがはっきりした以上、今後、銃撃事件が頻発する危険は高いと見ています」(前出・鈴木氏)
2022.06.08 11:00
NEWSポストセブン
2007年の携帯電話売場。最新機種はどれもガラケー(イメージ、時事通信フォト)
迫る“ガラケー終了”の日 スマホに変えられない暴力団幹部の嘆き
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ガラケーなどで使われる「3G」(第3世代移動通信システム)停波による暴力団関係者への影響について。 * * *「先日、携帯会社から電話があったんだよね」とある暴力団幹部が話し始めた。彼が鞄から取り出したのは、年季の入ったガラケーだ。「今後、お使い頂いているガラケーが使えなくなりますので、店頭にご予約して頂ければ、新しくご購入頂けるように致しますが」と、携帯会社のショップの女性に電話で言われたのだという。「そう言われてもね」と幹部は苦笑した。 彼のような古い機種の携帯電話、通称ガラケーは3Gの電波を利用している。auのキャリア(携帯電話事業者)からの電波供給は2022年の3月末ですでに終了。ソフトバンクは2024年1月下旬に終了予定、ドコモは2026年3月31日終了予定だ。 電話やメールだけの利用なら、ガラケーは月々の料金が安いし、バッテリーの持ちがいい。ガラケーを使い続けたいなら、4G対応の新しいガラケーも各社が出しているのだが、幹部が「そう言われてもね」と言ったのは、違う理由だった。 この携帯会社からは以前にも、電波供給終了の案内に関してと電話があったという。この日、電話をかけてきた担当の女性の声は若かったらしい。「たぶん新人なんだろうな。張り切った声だった」 担当者はとても丁寧に新しい機種への買い替えを勧めてきた。だが幹部は「前にも電話があって対応してもらったんだけど、反社だから、買えないんですよ」 反社と聞いても担当者は、声音が変わることなく、これまでと同じ調子でこう言ったという。「こちらでお調べしてから、もう一度、お電話してもよろしいですか?」「いいよ」、彼はそう返事して電話を切った。 すぐに折り返し電話がかかってきた。「こちらでは、そういう登録になっていないので、大丈夫ですよ」という担当者の声は明るかった。「いや、そういう問題じゃないんで」と笑ったという幹部。会社ごとに作られているだろう反社のブラックリストに引っかからなかったのだろう。「携帯の売買契約書の中に、反社会的勢力がうんぬんという文言があるでしょう」「はい」と歯切れのよく担当者が返事する。「買うのはいいんだよ」「はい。では、ご予約はいつに?」「買うからさ、契約書のその文言、削除してくれる?」「…削除ですか?」担当者の声がくぐもった。「上司に聞いてみますので、お電話かけ直してもよろしいですか」 数分後、また電話が鳴った。「申し訳ありません。さすがにそれはできないそうです」「じゃあ無理だね」「そうですよね」と担当者。「大丈夫だって言われても、契約書にサインしたら、嘘ついたことになるからさ」という幹部に担当者は「残念ながら、中古の機種をどこかで買うしかないですね」「そうだろ!」 幹部の周りでは、キャリアとの間でガラケーをめぐり、こんなやり取りが繰り返されているらしい。 携帯電話各社は、暴力団排除条例が全国で整備される2011年以降、利用規約の中に、暴力団など反社会勢力を排除する規約を設けている。これにより、暴力団組員や組織に関係する者は携帯を新規契約することができない。「ヤクザはスマホを持てない」と言われるのはこのためだ。 この幹部が持っているのは2011年以前に契約したガラケーで、それをそのまま使い続けてきたという。携帯ショップの女性は、「中古の機種をどこかで買うしかない」と言ったが、4Gや5G対応のものを新たに使用するにはキャリアとの契約が必要になるため実際にはこれも難しい。「俺たちみたいなヤクザは、小さな罪でもすぐに捕まる。大丈夫だと言われたから、あとは俺の責任じゃないと言っても、警察には通用しない。反社のチェックをしている所では、きちんと自己申告しないとまずい」 実際、暴力団員であることを隠して携帯電話を契約したことがバレて、電話機をだましとったとして詐欺容疑で逮捕されるケースは少なくない。 ガラケーは新しくできないが、幹部は違う番号のスマホを持っている。購入したのは中古機種だというが、入手経路の詳細は聞いていない。「ガラケーは電波が終了するまで、このまま持っているよ。性能がいい、使い勝手のいいスマホも沢山出ているが、俺たちには関係ない。いくら新しく便利になっても、俺たちには買えないからさ」 そう話す幹部のガラケーがまた鳴った。
2022.06.05 07:00
NEWSポストセブン
当時の地元紙からも抗争の過激さが窺える
本土復帰50年『ちむどんどん』では描かれない沖縄ヤクザの裏面史【後編】
 本土復帰から50年の節目に、沖縄を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』が放送されている。一方、沖縄では、朝ドラでは描かれない“裏面史”もある。フリーライターで『サカナとヤクザ』などの著書がある鈴木智彦氏がリポートする。(前後編の後編。前編から読む) * * * 那覇派の頭目は空手道場の天才少年で、スターと呼ばれた又吉世喜だ。彼も実弟にタクシー会社を経営させていた。会社は合併を繰り返し、那覇最大のタクシー会社に成長した。当時、沖縄のタクシーに乗車中は、ヤクザの悪口を言えないという笑い話もあった。 コザ派と那覇派は、沖縄で大ブームだったビンゴゲーム遊技場の利権で揉め、沖縄ヤクザの第一次抗争がスタートする。コザはスターを旧日本軍の飛行場に連れ出し暴行するが、スターは空手の達人なので押され、棍棒や石で殴りつけ重傷を負わせた。琉球警察は両派を大量検挙して、抗争を鎮静化させるほかなかった。『ちむどんどん』の第1話の舞台となる昭和39年には、コザ派から泡瀬派が脱会、コザ派はぎょろっとした目玉をトレードマークに、ミンタミー(目玉)と呼ばれた新城喜史を首領として山原派を立ち上げた。派閥名の通りミンタミーはやんばるの出身で、構成員もまたやんばる一帯の若者だった。 沖縄では警察官が退職し、ヒットマンになった例さえある。山原派にはおそらく比嘉家の親族、関係者、知り合いがいただろう。やんばるは産業がない。映画監督の布川徹郎がドキュメント映画で描いたように、モトシンカカランヌー……元手の不要な仕事の筆頭がヤクザと泥棒と売春婦だ。 一方の那覇派からも普天間派が離脱した。4組織がにらみ合う一触即発の中、前述した山口組の殺し屋が、那覇派のスターを狙って撃った。スターはまたも一命を取り留め、不死身と呼ばれるようになる。その後、土佐犬の散歩中に撃たれて死ぬが、強者の慢心があったはずだ。 銃器を使い始めると限度がなかった。米軍基地の不良兵が、拳銃やカービン銃、手榴弾を横流しするからだ。マシンガンさえ格安で手に入る。拳銃より日本刀の方が入手困難だった。日本刀の代わりとして車のサスペンションを加工して刃を付けた。サビだらけの模造刀は名刀・破傷風と称された。 度重なる抗争の中、普天間派のトップが銃殺されて解散すると、沖縄に新たな外敵が現れた。本土最大の暴力団、山口組が進出を狙っていた。 暢子が高校を卒業して上京するのは、沖縄が本土復帰した昭和47(1972)年である。その前年、山口組の小田秀臣が復帰前の沖縄を訪れている。当時、山口組は山口組時報という会報誌を発行していた。5月号の表紙は守礼門の前に置かれた山口組旗で、沖縄右翼の大物である宜保俊夫の談話が掲載された。宜保の肩書きは「三代目山口組内東亜友愛事業組合理事沖縄支部長」になっている。 また論功行賞の不公平を理由に独立した上原組も山口組を頼った。沖縄ヤクザはこれに対抗するため大同団結し、旭琉会を発足させた。 サトウキビの他、主要な産業のあまりなかった沖縄では、第三次産業が極端に発展した。当時、アルコールの消費量も日本一で、基地からは大量のヤミ煙草が持ち込まれた。パチンコやスロットの換金率もよく、本土では10秒回って止まるスロットが、沖縄では3秒でストップする。短時間で結果が分かり、より多く賭金を徴収できる。 モアイ(模合)という沖縄独自の互助システムは頼母子講の一種で、沖縄人を結びつける鎖の役割を果たす。飲み会とセットで絆を深めるのは効果的な仕組みだ。ここから所場代を取るヤクザはモアイもシノギにした。昭和52年に逮捕された旭琉会の中堅幹部は、モアイで21億8000万円を動かし、座料で3800万円の利益をあげていた。 盛り場の住人であるヤクザの利権は増大し続けた。本土復帰後も、風俗営業等取締法の本土並み適用は2度にわたって延期された。内地の暴力団はソープランドなどを経由し、覚醒剤汚染のなかった沖縄に、悪魔の白い粉を持ち込んだ。利権の増大に比例し、抗争は過激化する一方だった。 リンチによって亀頭をペンチで毟られた上原組の若い衆は、その報復に山原派のミンタミーを撃ち殺した。同行したもう一人のヒットマンはフィリピン人とのハーフで、佐木隆三の書いた『海燕ジョーの奇跡』のモデルだ。彼は2009年に海難事故で行方不明となったが、警察は死亡を装い、フィリピンで生活している可能性があるとみている。 ミンタミーを殺された山原派は、7名部隊で相手の組員3名を拉致し、地元であるやんばるの森に連れ込んで深さ1.4メートルの穴を掘らせた。相手の親分の居場所を問いただしても知らないと拒否されたため、穴の中で銃撃して埋めた。うち一人は土の中から這い出してきたので、腹や心臓をめった刺しにして、こめかみにトドメの銃弾を撃ち込んで埋め戻した。私がまっすぐやんばるに向かったのは、この現場を取材するためだ。 今なら確実に死刑判決となる凶行だが、無期懲役で結審した。犯人グループの一部は仮釈放されたが、実行犯たちのかなりが今も刑務所にいる。教唆で逮捕され、同じく無期懲役となった旭琉会のトップ仲本善忠は、コロナ禍の直前、仮釈放を間近に控えながら風邪をこじらせ亡くなった。90歳を超えていただろう。 沖縄の抗争は山口組が撤退してからも続いた。旭琉会から富永清理事長が絶縁となり、一派が沖縄旭琉会を結成、第五次抗争に突入したのである。沖縄県警はアジトに張り付き警戒を始めた。銃器を手にした組員は警官に向かって「イッター・カラサチニ・クルサイヤー」(お前から先に殺してやる)と叫んで発砲、その隙に手榴弾を投げ込み、警察と激しい銃撃戦を演じた。この事件で沖縄県警は、「発砲もやむなし」と通達を下した。 それでも抗争は鎮静化せず、台風の夜に襲撃し、警戒中の警官2人を射殺し、定時制に通う高校生が巻き添えで殺され、主婦も巻き添えで撃たれた。沖縄ヤクザは抗争を「いくさ」と呼ぶ。抗争期間中は「いくさ世」だ。決して大げさとは言えない。平成3(1992)年に暴対法が施行されたが、これは沖縄の抗争が激しすぎたからだ。史上最大の抗争事件 東京で兄のボクシングジムを訪問した暢子は、彼が周囲に借金をして行方不明になっていると聞き、横浜鶴見を訪問する。そこで出会った沖縄二世の家に宿泊し、銀座のレストランに紹介状を書いてもらう。鶴見の沖縄県人会は京浜工業地帯が浅野埋め立てによって誕生し、その労働者の街として急速に発展する。沖縄の人たちが集まっていたのは鶴見橋を渡った潮田で、他に朝鮮人も多かった。 鶴見ではヤクザ史上最大の抗争事件が起きている。大正14(1925)年に起きた鶴見騒擾事件だ。 発端は東京電力が川崎市白石に建設しようとした火力発電所の工事だった。清水組(現清水建設)や間組の下請け業者が対立し、大阪の博徒も巻き込んだ市街戦では500人が検挙された。 片岡鶴太郎が演じる沖縄二世のような顔役もいた。宮城勇三は鶴見の親分と慕われ最期まで沢田住宅という十軒長屋に住み、鶴見を来訪する沖縄人に住居や仕事を世話した。 分裂から21年後の2011年、旭琉会と沖縄旭琉会が合併し、旭琉會が誕生した。彼らは平和のありがたみを骨身に染みて分かっている。もう二度と殺し合わず、『ちむどんどん』しないよう切に願う。(了。前編から読む/文中敬称略)【プロフィール】鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。※週刊ポスト2022年6月3日号
2022.05.29 06:59
週刊ポスト
「やんばる」では過激な抗争が繰り広げられていた(1992年の暴対法施行時に聴聞を受けた旭琉会幹部。写真/共同通信社)
本土復帰50年『ちむどんどん』では描かれない沖縄ヤクザの裏面史【前編】
 本土復帰から50年の節目に、沖縄を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』が放送されている。一方、沖縄では、朝ドラでは描かれない“裏面史”もある。フリーライターで『サカナとヤクザ』などの著書があるフリーライターの鈴木智彦氏がリポートする。【前後編の前編】 * * *『ちむどんどん』の舞台となる“やんばる”は、山が重なり合う森林地帯で、ヤンバルクイナといった天然記念物や貴重な動植物の宝庫だ。主人公の一家が暮らす「山原村」は架空の集落なので特定できないが、沖縄本島北部、名護市以北と考えていい。那覇市や沖縄市からは距離があり、観光客はあまり足を運ばないだろう。レンタカーを借りても名護市を越え、国頭郡本部町の『美ら海水族館』に行くのがせいぜいで、やんばるをドライブするのは、かなりのマニアといっていい。 暴力団を取材テーマとする私はそのマニアの一人だ。初めての沖縄取材でも那覇に宿を取らず、まっすぐやんばるに向かった。ヤクザオタクにとって、やんばるは数々の伝説のヤクザを輩出した武闘派の代名詞で、凄惨な抗争事件の現場となった聖地である。当時はまだフィルムカメラの時代で、やんばるの撮影だけで36枚撮りフィルムを10本以上消費した。 年代や場所を特定すればするほど、架空の物語をフックに実際の歴史に切り込める。『ちむどんどん』の第1話は東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年から始まった。両親はサトウキビを栽培する貧農で、父・比嘉賢三(大森南朋)、母・優子(仲間由紀恵)の夫婦には、主人公の暢子(黒島結菜)はじめ4人の子供がいる。サトウキビ畑の労働は過酷だったらしい。ヤクザたちも金がなくサトウキビを刈り取って製糖工場に運んでいた。「若い者が徒党を組んでキビ倒し。なにがヤクザかぜんぜん分からん。あれだけは金がある時は絶対に行かなかったよ。とにかくきついから」(現・旭琉會・花城松一最高顧問。『沖縄ヤクザ50年戦争』より抜粋) ヒロインの父親はこの年に死亡するが、過酷な労働が身体を蝕んだのかもしれない。 暢子は10歳なので昭和28年生まれ、最初の子供である長男・賢秀(竜星涼)は昭和24年生まれの団塊世代だ。戦前まで沖縄にはヤクザ組織が存在しなかった。集団化してグループを形成したのは昭和27年頃だ。ヒロインの歩みは、沖縄ヤクザの歴史そのものである。比嘉家の背景を知れば、沖縄ヤクザのすべてが分かる。実家から事務所通い 沖縄ヤクザの原型は戦果アギャーである。 戦果をあげる人……占領軍の物資を強奪する窃盗団だが、鼠小僧のような義賊のニュアンスを含んでいる。 暢子が生まれた頃、戦果アギャーから発展したグループはコザ市(現沖縄市)にコザ派を形成、水商売の店や遊技場を経営した。同時に地域の自警団となって、米兵相手の商売人の用心棒を務めた。一方、那覇市近郊では、沖縄空手の道場から空手の達人たちが用心棒となって那覇派を結成。この2グループが沖縄ヤクザのプロトタイプだ。 実際、彼らは現代暴力団とは異質の、暴力専業者としては不完全な試作品だった。よくいえば牧歌的でロマンがあった。 博徒は初対面の挨拶で手を差し出し、「お控えなすって」と仁義を切る。アメリカ統治下の沖縄は握手の文化だ。新興の沖縄ヤクザは仁義を知らず、その手を両手で握り返したという。武器を使うのは恥とされ、抗争に拳銃を持ち込んだのは山口組のヒットマンだった。加えて沖縄ヤクザは、アシバー(遊び人から転じてヤクザ)であっても普通の市民で、それぞれ正業を営んでいた。 抗争を繰り返し、沖縄ヤクザが団結して旭琉会を旗揚げしてからも、「ナニワ造花グループ」や「上之蔵氷屋グループ」は、「花屋シンカ」「氷屋シンカ」と呼ばれ、正業で派閥が色分けされた。「センターシンカ」という一団は「バスセンターのグループ」で、車掌が運賃を誤魔化さないよう監視したのだという。シンカとは友人とか仲間を意味するウチナーグチだ。コザ派や那覇派も、コザシンカであり、那覇シンカだった。プロパンガスの販売にもシンカはあった。 こうした沖縄の特殊事情は、ヤクザを容認する風土の根だ。黎明期、戦果アギャーから身を起こした「ターリー(父)」こと喜舎場朝信は、暢子が9歳のとき(昭和38年)に逮捕され、2万5000ドルの保釈金を払って娑婆に戻り、沖縄の銀行をカラにしたと噂になった。仮釈放後、コザ市照屋の区民館で『喜舎場朝信を救う会』が開催された。地元の市議会議員や経営者たちが集まり、嘆願書を提出したのだ。 現在も沖縄では実家から事務所通いをする若い衆をみかける。親が事務所通いを許容するのは、暴力団を反社会勢力と考えていないからだろう。(後編に続く)【プロフィール】鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。※週刊ポスト2022年6月3日号
2022.05.29 06:58
週刊ポスト
ロシアからの水産物輸入減少が懸念されている(イメージ)
ロシア産輸入困難で増加が懸念される密漁 元組長が明かす“逃げるが勝ち”な実態
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシア産品の輸入困難な状況から今後、増加が懸念されている日本の海での密漁について。 * * * ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ロシア産の水産物の輸入減少への懸念と国産の不漁などが複合して、国内では水産物の価格が上昇している。特にサケやマス、カニに影響が出ており、東京都中央卸売市場では高値が続いているようだ。カニ輸入にしろ国産にしろカニの価格が高騰し続ければ、密漁が増えるかもしれない。そこで、ある暴力団の元組長A氏に密漁について話を聞いた。「今はもう辞めてしまったヤクザが多い」というが、「オホーツク海では昔、定置網や刺し網のブイに代紋が入っていた。その下は全部、組のモノだ。当時の密漁はそれぐらい儲かった」とA氏は語る。刺し網といえばカニ漁だ。 ブイに代紋が入っていたというのは、さすがに昭和の頃の話らしい。そのようなブイがいくつも並ぶ海を見て、漁師たちはどう思ったのだろうか。今は獲れる量も減り、安い輸入品が増加、燃料代は高騰し、取締りも規制も年々厳しくなってきた。儲かっていた頃とは時代が違い、密漁しても割に合わなくなったようだ。密漁を行っていたヤクザたちの高齢化も理由の1つらしい。「密漁はヤクザとテキヤで分けるなら、テキヤの仕事だ。テキヤは季節モノ、密漁もモノによって時期が限られている。昔はある時期、組の事務所に電話すると、『今、コンブ漁に出ている』という返事があったくらいだ。組によっては、密漁がシノギの中心だった所もある」コンブも獲れた場所や質、大きさなどにより、良い品はかなりの高値がつくのである。 令和2年12月1日に、改正漁業法が施行され、罰則が厳しくなった。密漁は漁業権の侵害にあたり、100万円以下の罰金になった。漁業権を持たない者が潜水機や底引き網などを用いて無許可で操業し、起訴された場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる。「普通に密漁するのは漁業権の侵害だが、生け簀などで養殖している所から取ってしまうヤツもいる。これは単に泥棒だ。窃盗罪になり、俺たちみたいな者だとまず懲役になる。楽で簡単だが、やるヤツはバカだ」(A氏)「現行犯でないと逮捕は難しい」 A氏自身もオホーツクの海で、何度も密漁したことがあるという。「捕まったことはない。ボートか船に船外機を2台取り付ければスピードが出る。普段は1台を使って走るが、いざという時は2台目もつけて逃げる。2台あればそのスピードは半端ない」。 見渡す限りの広い海で、密漁船を追いかけてくるのは警察の捜査船ではなく、海上保安庁が各地に設置している海上保安部の巡視船だ。領海侵犯した中国漁船に退去を求めて衝突された巡視船の映像は有名だが、あの船から逃げ切れるのかと聞くと、A氏の答えは「余裕だよ。問題ない。簡単なことだ」「海には波がある。1mの波があれば、上と下で2mの高さだ。オホーツクは普段から波が荒いから、2mの波なら上下合わせて4m。4mもあれば、小さな船などあっという間に波に隠れて見えなくなる。海で小船を追いかけ続けるのは、想像するより難しいことだ。波の間をかいくぐっていけば、まず見つからない。それでも追いかけられれば、荷を捨てて、重量を軽くして、スピードを上げて逃げればいいだけだ」「密漁は現行犯でないと捕まえるのは難しい」 荷を捨ててしまえば証拠はなくなる。密漁船、密漁者、密漁品を抑えなければ、現行犯逮捕はできない。 警察や海保を含め密漁を取締り監視する側は、どの船が密漁をしているのか、どれが密漁船なのか知っているとA氏はいうが、それでも港で捕まえるのは難しいと話す。「船の名前や番号などは簡単に誤魔化せる。密漁している間は、変えてしまえばいいだけのこと。車のナンバープレートを偽造して張り替えておくようなものだ。港に戻った時には名前も番号も戻してある」 密漁品をさばくルートはいくらでもあったというから、密漁がいかにヤクザにとっての資金源だったかがわかるだろう。船から上げて荷を運ぶ際は、海保ではなく警察の動きに気をつけたという。「警察の動きは常にチェックし、検問をやっている所は避けた。密漁は地元のヤクザなどの協力がないとできるものではない。北海道の田舎の漁港あたりでは、誰がヤクザかヤクザと関係があるかは周知の事実。誰がよそ者かは一目瞭然だ。よそ者がおかしな動きをしていれば、すぐに警察に通報される。検問にひっかかればあれこれ聞かれ、車の中を調べられる。もし密漁したアワビやウニが見つかれば”港で拾った”と言えばいい。俺たちが密漁したという証拠はない」密漁者を捕まえるのは、存外に難しいようだ。 密漁と聞けば、上記のようにオホーツク海のカニ漁が思い浮かぶが、実のところ密漁は瀬戸内海でも見逃せないほどの規模になっているのだという。瀬戸内海では近年、アワビやナマコの密漁が多発しており、改正漁業法でこの2つは特定水産動植物に指定された。そのため密漁すると3年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科される。個人に対する罰金としては国内で最高額だ。 瀬戸内海で密漁が頻発するのは、アワビやナマコが獲りやすいというだけでなく、瀬地内海の地形が関係しているとA氏はいう。「小さな島が沢山あるから、島影に隠れ、船を岸に着けてしまえば見つからない。オホーツク海の冷たい荒波に比べれば、瀬戸内海は穏やかで温かく安全。今ではヤクザ以外の人間の方が多いのではないか」。 密漁の取締りはどこまで行ってもイタチごっこのようだ。
2022.05.28 16:00
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 国会議員の現物「給与明細書」大公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 国会議員の現物「給与明細書」大公開ほか
 5月23日発売の「週刊ポスト」は、知らないと大変な健康と財産の「怖い話」をお伝えする。コロナの思わぬ余波で「トイレで死ぬ老人」が急増し、さらには「野菜を食べて糖尿病になる」リスクが高まっているという。ウクライナ問題では「プーチンの後継者」に迫る。山口県阿武町の4630万円誤給付事件では、なんと容疑者の「逆提訴」が取り沙汰されている。そして、「毎月100万円しかもらってない」と放言した細田衆院議長に直撃すると、本誌記者にさらなるトンデモ発言を浴びせてきた!今週の見どころ読みどころ◆細田議長がさらに暴言! ならば本誌は国会議員の「給与明細書」を公開する細田博之・衆院議長が「毎月もらう歳費は100万円しかない」「月額100万円未満の議員を多少増やしてもバチは当たらない」などと放言して国民の怒りを買った。実際には国会議員の収入はもっとずっと多い。議長となればなおさらだ。本誌は現役国会議員の給与明細と源泉徴収票を入手し、公開する。さらに細田氏を直撃すると、反省の弁どころか、「詳しくは知らんが(中略)47万円しか手取りは出ておらず(後略)」などと、さらにトンデモ発言を重ねた。なんとのたまったか、本誌をじっくりお読みください。◆4630万円ネコババ男が「反訴で逆襲」説は「可能性あり」間違って振り込まれたコロナ給付金をネットカジノで使い込んだとされる田口翔・容疑者だが、なんと逮捕前に名前や住所を公開されたことをめぐり、町を反訴するという情報が流れている。裁判例や専門家を取材すると、実はこれ、荒唐無稽な話でもなさそうで……◆ビートたけし「上島竜平は“ぬるま湯を熱湯に見せる”から芸人なんだっての」急逝したダチョウ倶楽部の上島竜平さんとの思い出をビートたけしが語った。どんなに苦しい時も道化を演じて人を笑わせなければならない芸人のつらさを語ったうえで、上島さんの芸風と芸歴を振り返った。『スーパージョッキー』の名物コーナーだった「熱湯コマーシャル」の秘話も。◆金正恩が“コロナ流入の罪”で国境警備隊員らを「ハチの巣銃殺刑」にしていた4月末に突然、「初のコロナ発生」を公表した北朝鮮では、ほとんどの国民がワクチンを接種しておらず、医療体制も貧弱なため大きな人的被害が出ると予想されている。金正恩・総書記は防疫に失敗した担当者らに激怒し、中国からの密入国を許した国境警備隊員や保衛指導員らを公開銃殺刑にしたという。しかも、見せしめのために数百発の銃弾を撃ち込まれた受刑者たちの姿は凄惨を極めたと伝えられる。◆佐々木朗希の“天敵”となった「球審の白井」はAKB48の大ファン佐々木に詰め寄った「事件」で注目された白井一行・審判員が、今度は佐々木のチームメイトである主砲レアードを退場処分にして物議をかもしている。もともと「アーイッ!」と叫ぶ独特のストライク・コールで海外まで名が知れた名物審判員だが、その素顔はAKB48の大ファンで、推しは、あの元センターだそう。なんと、ストライク・コールのキメポーズもAKB由来だった!◆広瀬すずが新作映画で挑んだ「オーラル濡れ場」がスゴかった自ら「必死すぎた」と振り返った新作映画『流浪の月』で、広瀬が大胆な濡れ場に挑んでいる。恋人役の横浜流星との濃厚な演技は観客を圧倒する。広瀬は今後の女優としての活動について、「いい人じゃない人をやりたい」と語った。◆重病説のプーチン「後継」に浮上したアイスホッケー男は「もっと過激」だったパーキンソン病、血液のがん、認知症などが取り沙汰されるプーチン大統領には「一時療養」説が浮上している。後継の本命と見られてきたショイグ国防相はウクライナ戦争の失態で脱落し、かわって本命視されているのがプーチン氏のアイスホッケー仲間であるドミトリー・コヴァリョフ氏だ。「大統領府の局長」とも「大統領の副官」とも報じられる同氏が元首になれば、停戦どころか「プーチン以上に過激になる可能性がある」という。◆<命の危機1>トイレで死ぬ老人が増えているちょっと不謹慎な言い方だが、コロナ禍で「糞死」する高齢者が増えているという。専門家によると、籠城生活のせいで便秘になり、排便時に「いきむ」ことで脳卒中や心筋梗塞を起こす事例が多い。若い人と違って、高齢者はいきむと血圧が一気に上がるとされ、まずはそのリスクを自己診断することが大事だ。正しい排便姿勢も図解する。◆<命の危機2>野菜の食べすぎで糖尿病になるなんて一般的には健康にいいとされる野菜食だが、近年の野菜には注意が必要だという。品種改良技術の進歩と消費者の嗜好の変化で、多くの野菜が「糖度」を競っている。いまやフルーツトマトより甘いネギやニンジンが普通にスーパーに並んでいる。専門家は、そうした野菜を採り続けることで将来的に糖尿病のリスクが高まると警告する。◆球界異変! 3割バッターが絶滅寸前になっているのはなぜなのか?今年のプロ野球は近年まれに見る投高打低になっている。完全試合やノーヒットノーランが頻発するのも偶然ではない。飛ばないボール説、ストライクゾーン拡大説、コロナ歯抜け打線説など、その理由についてデータと専門家の目で分析する。◆「ちむどんどん」では描かれない「やんばるヤクザ」の裏面史本土復帰50年にあわせてNHKの朝ドラは沖縄を舞台にした『ちんどんどん』が放送されているが、実はこの半世紀は沖縄でヤクザが生まれ、抗争し、離合集散を繰り返した時間でもあった。フリーライターの鈴木智彦氏が、ドラマの舞台となった「やんばる」で繰り広げられたヤクザ抗争の歴史をひもとく。◆シニアドライバーたちの主張「免許返納はしません」5月13日から高齢者の免許更新に新たな検査が加わり、警察の「返納圧力」が増している。しかし、免許返納はしないと決意する高齢者も少なくない。鳥越俊太郎、江本孟紀、猪瀬直樹、谷隼人、釜本邦茂の各氏らが「老年の主張」を展開する。◆さらなる“改悪”に負けない「得する相続税」裏ワザのすべて政府は次々と相続税の“改悪”を打ち出しているが、上に政策あれば下に対策あり。制度をよく知ることで相続税は大きく減らすことができる。不動産の名義変更や遺言書の書き方、相続放棄や税務調査の知られざる実態を詳細にリポートする。◆<カラーグラビア>自然エネルギー「巨大発電所」をゆく資源高が経済に暗い影を落とすなか、日本国内の自然エネルギー発電の現状を取材した。ゴルフ場跡地を活用したメガソーラー発電所や38基の風車が並ぶ風力発電所など、見るだけで圧倒される迫力の画像に加え、普及から年数を経たソーラーパネルの廃棄、再利用問題も追った。※全国の書店、コンビニで絶賛発売中!
2022.05.23 07:00
NEWSポストセブン
車
盗難車を保管・解体する「不法ヤード」に関わる外国人の儲けの手口
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、近年、犯罪の温床になっていることが指摘されている自動車の保管・解体施設「ヤード」を巡り暗躍する外国人の悪行について。 * * * 2021年自動車盗の全国ワースト1位となった県、それは千葉県だ。県内の刑法犯認知件数は前年比2047件減少したが、3万2638件にのぼる。そのうち自動車盗は89件憎の759件。全国的には毎年上位に入るという嬉しくないランキングを誇るが、ここ数年は減少傾向にあった。それが5年ぶりに増加に転じたのだ。 盗難被害にあった車は、8割が施錠していたにも関わらず被害に遭っている。車種はトラックの他、トヨタ自動車のランドクルーザーやレクサスといった高級車に加えてプリウスが多いという。  それに呼応するように、千葉県内には自動車の保管・解体施設「ヤード」が多数存在する。その数624か所(2021年度12月末時点)と全国最多だ。千葉県警のホームページでは、ヤードについて「周囲が鉄壁等で囲まれた作業場等であって、海外への輸出目的として、自動車等の解体・コンテナ詰め等の作業のために使用していると認められる施設」とある。県警は、存在するヤードの一部が盗難車の解体や不正輸出のための作業場として、また不法滞在外国人の稼働や薬物使用などに利用されているとみているようだ。 ある中古車販売業を営む経営者・A氏から、ヤードを巡る不法な売買について話を聞くことができた。彼が語ったのは、表では日本社会に溶け込んでいるが、裏では犯罪に手を染める一部外国人たちの悪行だった。「彼らのビジネスは盗難車や盗難品の売買が中心だ。パキスタンやスリランカ、ロシア、イラン、中国から来た外国人が多く、増加傾向にある。盗難車を扱うヤードは、都内近県でいえば東京以外に、神奈川、千葉などに多く、地域によっては同国人同士で集まっている場所もある」 犯罪を行うパキスタン人とイラン人の収入源は主に薬物と盗難品の売買だ。と言っても表向きは、それぞれが飲食店や輸入雑貨の会社などをやっていて、前々から中古車屋をやっている者も多い」(A氏・以下同) さらにA氏は嘆く。「千葉や埼玉、神奈川などでは、ヤードが周りから見えないようにフェンスで囲い、違法な物品を保管しているところもある。時期が来たら取引したり、輸出する。彼らはヤードの中に、盗難車だけでなく、盗難品を沢山隠し持ち、それを海外に輸出して儲けていた。ヤードが外から見えないようにしてはならないという条例が出来たが、効果はない」世界に散らばるロシアネットワーク 条例が出来て警察が摘発を行うようになってからも、盗難車の輸出は続いているという。「彼らにとっては、盗難車を外に出すのが一番の収益になる。新潟や富山の港から船で運ぶ。以前は、ロシアにはどんな車でも輸出できたが、今はもう無理だ。当時は日本人もロシア人とつるみ、盗難車と分かっていて輸出していた。ロシアで走っている車で、少し前の型のランドクルーザーは、ほぼ日本からの盗難車だと思って良いだろう」車を盗むのは誰なのか。「盗んでくるのは日本人。その中でも半グレや元ヤクザなどのアウトローだ。彼らがつるみ、窃盗集団になって盗みをやる。それを外国人が買い、ごまかして外に出す。部品にすると関税が軽減されるから、解体して部品として東南アジアに輸出することも多い。パソコンなどの盗難品は、盗難車に混ぜて取引している。取引にかかわるイラン人もパキスタン人も独自にルートを持っている」意外にも彼らは、外国人同士で手を組むことはあっても、暴力団と組んで取引することはないという。「こうした犯罪で、イラン人とロシア人は比較的組むことが多く、ロシア人はパキスタン人と組むことがある。ロシアの勢力は大きく、世界中にネットワークがあるからな。日本では神奈川や千葉がメインだが、全国に散らばり、シンジケートを世界中に持っている。彼らはある意味マフィア組織に類似していて、暴力団とは違う。暴力団とは取引をせず、組んで仕事をすることもない。 犯罪にかかわるロシア人もイラン人も、悪事は働くが正業を持っていて、その収益も大きい。実態はマフィア化していても表の顔を持ち、社会に普通に溶け込んでいるから、警察沙汰になるような事件は起こさないし、拳銃なども持っていない。トラブルを嫌うので、取引相手にヤクザは選ばない」 彼らの間でも、中国人はまた事情が異なるという。「犯罪を行う中国人は、ロシア人やイラン人と組むことはあまりなく、誰も彼らとはつるまない。彼らは何かあると集団で向かってくるし、正面からぶつかってくるから危険だ。シマ意識もあるし、喧嘩もドンパチも平気。周囲とのトラブルも多いため、彼らと組みたがる者はいない」 条例が制定されても、「こうした不法ヤードでは、いつどんなトラブルが発生するか分からない」とA氏は語る。「各県では条例によりヤードに立ち入ることができるようになったとはいえ、盗難車を保管し解体しているかどうかまで確認するのは困難だとも聞く。不法ヤードを減らすには、県の担当者や警察による粘り強い対応しかないようだ」
2022.05.21 07:00
NEWSポストセブン
真相は…
天心vs武尊の仕掛け人RIZIN榊原信行代表「反社交際音声流出」記事に反論【前編】
 フジテレビが生中継する日本格闘技界最大のビッグマッチをめぐり、浮上したコンプライアンス問題──『週刊ポスト』2022年5月20日号の記事〈天心vs武尊の仕掛け人RIZIN代表・榊原信行氏「反社交際音声」流出トラブル〉に当事者が反論、すべての疑問に答えた。【前後編の前編】「申し訳ない気持ち」“世紀の一戦”を目前に、格闘技界に激震が走った。6月19日、東京ドームで開催される那須川天心と武尊の「キックボクシング頂上対決」(THE MATCH 2022)は、約5万席の前売り券が即完売、フジテレビで生中継される予定だが、そんななか実行委員を務める格闘技団体「RIZIN」代表の榊原信行氏(58)にトラブルが起きていた。 榊原氏が知人との会話のなかで、RIZIN関係者が暴力団と交際していることを認めたとされる音声データが流出。そのデータをめぐって、X氏というジャーナリストとの間に金銭トラブルが起き、警察沙汰になっているというのだ。『週刊ポスト』2022年5月20日号でそのことを報じると、格闘技界は騒然となり、ファンからは大会の開催やテレビ中継への影響を心配する声が上がった。『週刊ポスト』がこの件について改めて榊原氏に取材を申し込むと、インタビューに応じるという。取材はRIZINの事務所で、約2時間にわたって行なわれた。「当初から取材には応じるつもりでした。海外から帰国したばかりで自宅待機の期間があったため、締め切りに間に合わず記事が出てしまった。見出しに『反社交際音声』とありましたが、私自身が反社会的勢力と交際している音声があるとの誤解を与えるものだと感じ、とてもショックで残念でした。 何より、人生をかけたビッグマッチに臨もうとしている天心と武尊に迷惑をかけ、この一戦を楽しみに待っているファンの人たちにも水を差すことになってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、私自身には反社会的勢力との交際はない。一点の曇りもないことを、この場でしっかりお話ししたい」(以下、断わりのない限り「 」内の発言は榊原氏) まず榊原氏に本誌が入手した音声データを聞いてもらった。データには「2020年3月」という日付が記されているが、実際にその時期の会話であるかは不明である。 知人は会話の中で、Y氏というRIZINの関係者について、榊原氏に尋ねている。知人「Yさんのことやけども、あの人はそもそもね、何でRIZINの名刺を持ってないんですか」榊原氏「そういう意味で言うと、なんて言うんですか、表立って『RIZINのYです』っていうふうに動くと、やっぱりコンプライアンス的なことも含めてよろしくないっていうことは、ご本人も分かってみえるし、そういう正式なRIZINの顔としてというか、名刺を持って動く立場じゃないところで動いてもらうっていうスタンスでここまで来てます」 こんなやり取りもあった。知人「Y自身が例えばですよ、稲川会の○○(音声では実名)との付き合いがあるということも、榊原さん、ご存じなんでしょう?」榊原氏「そうです、知ってます」「反社との関係はない」 聞き終えた榊原氏は、「今の声は私の声だと思います。音声は私とその知人が電話でかわした会話で間違いないでしょう」と認めたうえで、こう語った。「その会話そのものが記憶にあるかと言われると全くないんですが、思い返してみるとその頃は、あるRIZINの選手をめぐってその知人やYさんがトラブルになっていた時期でした。その頃に録音されたものかもしれません」 音声に出てくるY氏とはどんな人物なのか。「Yさんとは2018年に知り合い、RIZINのスポンサーや権利関係に興味がある人たちを紹介してもらったりしています。ただし、お金を払ったことは一度もありません。 もう一度格闘技を盛り上げるのに協力したいということでしたが、Yさんは自分の風評が悪いことを自覚していて、自ら肩書きを持って動く立場ではないというスタンスなんです。 私もそうした風評は知っていたのですが、Yさん自身の申し出で、2018年の時点でRIZINの第三者機関であるコンプライアンス委員会によるチェックをさせてもらって、反社会的勢力との関係はないという結果が出ている。今回も改めてチェックさせてもらいましたが、やはり清廉潔白だということでした。私自身、悪く言われることもよくある人間ですから、風評だけで付き合いを決めるべきでないと思っています」 Y氏も本誌・週刊ポストの取材に「僕は反社とは違います」と答えている。しかし、音声ではY氏と暴力団との交際を認めているように聞こえる。どういうことだろう。「あの時の会話は全くシリアスなものではありません。その知人には高圧的な空気を感じていて、早く電話を切りたくて生返事してしまったんです。むしろ今回の件でYさんに迷惑をかけてしまったことが本当に申し訳ないです」(後編に続く)※週刊ポスト2022年5月27日号
2022.05.16 06:58
週刊ポスト
格闘技団体「RIZIN」代表の榊原信行氏に浮上した疑惑とは
天心vs武尊の仕掛け人RIZIN代表・榊原信行氏「反社交際音声」流出トラブル
 テレビと反社との関係が問われる問題がまたも浮かび上がってきた。日本格闘技史上最大のビッグマッチ──その生中継を目前に、関係者の驚くべき騒動が噴出した。「警察が捜査している」 1か月後に迫った「世紀の一戦」に、格闘技ファンは待ちきれない思いだろう。6月19日、東京ドームで開催される那須川天心と武尊(たける)の「キックボクシング頂上対決」は、長年両者が対決を望みながら、所属団体の違いからなかなか実現しない夢のカードだった。 それを実現に導いたのが、実行委員を務める格闘技団体「RIZIN」代表の榊原信行氏(58)である。格闘技ジャーナリスト・片岡亮氏が言う。「榊原氏は、那須川選手をRIZINに参戦させ、プロボクシング五階級制覇のメイウェザーとマッチメイクするなどして一躍スターに押し上げました。K-1のトップである武尊選手との一戦は、団体間の交渉の末にフジテレビの生中継を実現させた。複雑な交渉をテレビを中心にまとめあげるのがプロモーターとしての榊原氏の手腕です」 チケットの最高額は300万円だが、会見に臨んだ榊原氏は「間違いなく完売する」と自信を見せ、事実、前売り券は即完売となった。だが、そのドリームマッチの開催さえも左右しかねないトラブルが榊原氏に起きているという。その中身に触れる前に、まずは榊原氏の弁だ。「今、警察が入って捜査していますから、何も言えないんです」 電話での本誌・週刊ポストの直撃に詳細は語らなかったものの、警察沙汰となっていることを認めた。 そのトラブルとは、榊原氏に接触したX氏というジャーナリストとの間で起きた。その一連の経緯が犯罪行為にあたるとして、榊原氏はX氏を刑事・民事で告訴するべく動いているというのだ。 では、X氏は榊原氏に「何」を取材したのか。X氏が記事の材料として榊原氏に示したのは、榊原氏の会話が収められたとされる音声データだった。このデータは格闘技業界関係者の間で出回っていたとされるもので、それを入手したX氏は昨年12月、この会話の内容について聞くために榊原氏と面会したという。X氏に経緯を訊ねた。「榊原氏はその場で、音声の出所や(私にデータを提供した)情報源をさかんに聞いてきました。その後、音声データを送ると、榊原氏は記事を止めるなら、500万円を支払うと言ってきたのです。 私ではなく、私の情報源が拡散させることを恐れていた様子でした。私は500万円を現金で受け取り、情報源にそのまま渡しました」 X氏は「金銭は『口止め料』という認識で、支払いは榊原氏の申し出だった」とするものの、金銭を受け取って記事を止めたのなら、もはやそれは「取材」とはいえないだろう。榊原氏は「犯罪行為」と受け止めたようで、「後に榊原氏から、恐喝の疑いで刑事告訴を検討していると通告された」(X氏)という。「そうです、知ってます」 刑事事件になろうとしている状況は、榊原氏とX氏の双方が認めているわけだが、X氏が榊原氏に示した音声データとはどのようなものだったのか。本誌・週刊ポストが入手したデータには、榊原氏が知人と電話で交わしたとされる会話が収められている。データには「2020年3月」という日付が記されているが、実際にその時期の会話であるかは不明である。 知人は会話の中で、Y氏というRIZINの関係者について、榊原氏に尋ねていた。「Yさんのことやけども、あの人はそもそもね、何でRIZINの名刺を持ってないんですか」 それに対し、榊原氏だとされる男性はこう答えている。「そういう意味で言うと、なんて言うんですか、表立って『RIZINのYです』っていうふうに動くと、やっぱりコンプライアンス的なことも含めてよろしくないっていうことは、ご本人も分かってみえるし、そういう正式なRIZINの顔としてというか、名刺を持って動く立場じゃないところで動いてもらうっていうスタンスでここまで来てます」 こんなやり取りもある。「Y自身が例えばですよ、稲川会の○○(音声では実名)との付き合いがあるということも、榊原さん、ご存じなんでしょう?」「そうです、知ってます」 この知人に本誌が入手した音声を示すと、自身の声であることは否定せず、「RIZINとの守秘義務があるため話せない」と話すのみだった。 一方の榊原氏は「ちゃんと聞いたわけではないので、答えられない」としたうえで、改めて「捜査中のことなので」と繰り返した。5月5日、RIZINの試合会場に入る榊原氏に再度質問したが、「広報を通してください」と話した。 音声で名前の挙がったY氏とはどんな人物なのか。RIZIN関係者はこう言う。「Y氏は榊原さんにとって、厄介な交渉をサポートするトラブルシューター的な存在です。Y氏自身は周囲に、RIZINの顧問のような立場だと語っていました」 Y氏に訊くと、「私の口から答えることができるかどうか。榊原の口から答えるべきか、(RIZINの)広報の口から答えるべきか。事件になっているので、警察と話をしなくてはならない」と話した。 音声データの中で暴力団と交際しているとされている点については、「僕は反社とは違います。榊原がそう言っているのであれば、僕は榊原を名誉毀損で訴えなければならない。今も色んな方と付き合いがありますが、大企業の社長との付き合いが多いですよ」と答えた。 トラブルに発展した後も、榊原氏側とX氏の間では交渉が行なわれていたという。X氏が言う。「今年の3月に、榊原氏から面会の求めがあったので応じました。その場には榊原氏とRIZINの代理人弁護士のほか、Y氏らも同席しました」 以下はX氏が録音したその場のやり取りの一部だという。榊原氏の発言とされる音声だ。「その音声データを元にこっちを困らせようとしたり、足下すくおうとしたり、嫌がらせしようとしたり、もっと言えばお金を取ろうとしたり、というのがあったのかもしらん。彼ら(※X氏の情報源を指すと思われる)のところを何とか成敗してそこにフタをしない限りはこの話はきっと終わらないのかもしれない」 さらに、こう口にした。「この2人(※Y氏と代理人弁護士を指すと思われる)からすると、なんで(金を)出しちゃってんですかと、榊原さんそんな弱腰でって感じだと思うけども、こんな話は終わりにしたいし、表に僕らからこういうことがネタとして出ること自体が何一つ得することがない」 同席していたY氏が発したとされる言葉。「500万円を払ってしまった榊原さん、もうなんでって僕はすごく思ったしすごく切なかったし、これはやりづらいことになるな、まぁもしくはならなきゃいいな。が、ちょっとなりかけてる。500万円を受け取った事実をなんか天下取ったように話されている」「恐喝みたいなことをしてね、『俺、RIZINから金取ってやったんだ』なんて言うような人間を許しとけるわけないじゃないですか」 そのうえで「(X氏を)訴えます」「RIZINにちょっかい出したらすぐこうやって警察が動くっていう前例を作る」とも口にした。 この面会を受けてX氏は代理人弁護士に相談したという。X氏の弁護士は、「Y氏を同席させて取材依頼元を開示するよう強要してきたとして警察に掛け合い、告訴を準備している」と語った。過去の交際疑惑 思わぬトラブルに巻き込まれた榊原氏だが、流出した音声データにある言葉通りであるなら、Y氏が暴力団と関係があると認識したうえで、RIZINの仕事に関わらせていることになる。 榊原氏はかつて、反社会的勢力との関係が取り沙汰されたことがある。2006年、『週刊現代』をはじめ一部メディアで、当時、格闘技団体「PRIDE」を主宰するDSE(ドリームステージエンターテインメント)代表だった榊原氏と、暴力団幹部との交際疑惑が報じられた。 報道を受けてPRIDEを大会中継していたフジテレビは、「DSEによる契約違反が明らかになった」として、放送中止を発表、DSEとの契約も打ち切った。契約違反の内容について明らかにされることはなかったが、フジの広報部は当時、「社内調査をした結果、疑惑の確度は限りなく黒に近いと判断した」(『AERA』2006年6月19日号)と答えている。 この措置に対して、榊原氏は即座に記者会見を開き、「記事は一切、事実無根です。反社会的勢力とあたかも関係しているかのように作られた記事で契約解除されるのは、我々としては納得できません」と反論したが、放送中止の決定は覆らなかった。PRIDEは他団体に買収されることになり、事実上消滅した。 榊原氏は雌伏の時を経て2015年にRIZINを設立、再びフジテレビとタッグを組み、格闘技中継の地上波復活にこぎつけた経緯がある。榊原氏はRIZINの設立1年の節目に、記者会見でこう語っていた。「コンプライアンスは私自身もいろんな形で皆さんから非難を受けたり、やり方に関して脇が甘かった部分がたくさんあったかなと猛省しております。企業としての防衛力、コンプライアンスを徹底的にし、自分たちを律していきますし、皆さんにご心配やご迷惑をかけないようなクリーンな大会運営に努めたい」 だが、流出した音声データの受け止められ方次第では、16年前の躓きの原因となった「反社会的勢力との関係の疑惑」が再び取り沙汰される事態となりかねない。フジテレビの見解は 改めてRIZINの運営元のドリームファクトリーワールドワイド広報担当者に尋ねると、「榊原代表本人が直接対面して取材に応じたいが、締め切りまでには都合がつかない」としたうえで、こう文書回答があった。「弊社は、貴社への情報提供者らを加害者、弊社を被害者として、警察にも立件のご相談をしている立場であり、貴社はかなりの事実誤認をされている可能性があると思っています。また、X(文書では実名)らの行動により、弊社には経済的な損害(その額は決して慰謝料相当額にとどまらないと考えます)も現実に発生しているところであり、Xらに対しては民事でも損害賠償請求を検討しているところ、貴社がXらの行動を援助、助長される場合には、貴社ないし貴社ご担当に対し実損害につき民事の損害賠償をすることも検討しなければならなくなります。 貴社におかれてはご賢察賜り、まずは弊社への十分なご取材を尽くしていただきますよう、また、決して犯罪行為に加担することのないようお願いいたします。我々はいかなる反社会勢力とも関係しておらず、それは立ち上げから今現在に至るまで清廉潔白に格闘技イベントを主催・運営していることを改めて申し上げます」 イベントを放送するフジテレビはどう考えるか。「弊社は常に放送における基準や法令・ルールの遵守を徹底しており、今後も適切に対応してまいります。なお、RIZINの主催・運営には弊社は関わっておりません」(企業広報部) このフジの姿勢には問題があると、メディア法を専門とする田島泰彦・早稲田大学非常勤講師は指摘する。「企業は、取引関係業者、利害関係者が反社会的勢力ではないかを確認する義務があり、なかでも公共物である電波を政府から割り当てられているテレビ局は、いっそうコンプライアンスの徹底が求められます。 今回の件では、フジテレビは即、調査を行ない、その内容、経過についての説明責任も生じると考えます。フジテレビはかつてPRIDEに関してコンプライアンス問題があり、契約を解除した経緯があり、その過去の教訓があったにもかかわらず今回、フジが注意義務を果たしているようには見えません。このままおざなりな対応を続けると、報道機関としてのフジの信頼性にも影響を与えることになりかねません」 まずは関係者が流出したデータの真偽や真相について公にし、世紀の一戦が、クリーンな形で行なわれることを願う。※週刊ポスト2022年5月20日号
2022.05.16 06:56
週刊ポスト
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暴力団事務所襲撃 入念なシミュレーションでも場所を間違える理由
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団事務所襲撃の際、実行犯はいかにして“リスク”を回避するのか、暴力団関係者らが語る。 * * * 5月3日、岡山市北区にある指定暴力団・池田組の関連施設に、軽ワゴン車が突っ込み、建物の壁面や窓ガラスなどを損壊するという事件が起きた。犯人は特定抗争指定暴力団、六代目山口組傘下の51才の組員。事件の後、約30分後に岡山中央署に自首し、建造物損壊の疑いで緊急逮捕された。警察の取り調べで容疑者は「自分の車を運転してバックで突っ込んだ」と供述しているという。 ある暴力団関係者からLINEで情報が送られてきたのは事件の日の夜。ビルに突っ込んだままの軽ワゴン車の前で、警察の鑑識捜査が行われている現場写真や、窓ガラスが割れたビルの写真があった。暴力団関係者にとっても、LINEは便利な情報ツールだ。暴力団というキーワードが付く事件が起こる度、彼らからのLINEには、事件概要だけでなく現場の写真や動画が飛び交う。事件の一部始終が撮られていることもあれば、血だらけになって横たわる被害者や犯人らしき人物が映っていることさえある。そしてその映像は、メディアのニュースソースとして流れることも多い。 池田組は、神戸山口組から離脱して独立組織になっており、容疑者は六代目山口組傘下の五代目山健組系組員だ。五代目山健組は六代目山口組から一度脱退し、その後、脱退した他の組とともに神戸山口組を結成したが、2020年に組を離脱。2021年に再び六代目山口組に復帰している。池田組も五代目山健組も同じ組織の傘下だった組同士なのだ。情報をくれた暴力団関係者が「面白いですよね」とコメントするぐらい、山口組が分裂して以降、離脱に脱退、破門に復帰が繰り返され、傍目には誰が身内で敵なのか分かりにくくなっていた。 警察は暴力団抗争の可能性も視野に入れているというこの事件、LINEにはこんな内容も送られてきた。「バットを持って事務所に行ったが、誰も出てこないのでガラスを全部割ったそうだ」 突っ込んだ施設には普段、組員が出入りしていたというが、事件当時、人がいたかどうかは分かっておらず、警察が捜査中だ。容疑者の動機は不明だが、相手がその場にいるかいないか分からないというのは、このような場合リスクでしかないはずだ。 ある暴力団組織幹部・A氏は、抗争などで相手の事務所や関連施設を襲撃したり、拳銃を撃ち込んだりする場合、「決行するにあたって、そこに人がいないことが前提になる」と話す。 凶器をもって事務所に乗り込むだけでも、実行犯にとっては命がけで、「自分に振りかかるリスクはなるべく避けたいのが本音」(A氏・以下同)。襲撃に行く組員は相手をやることより、できるだけ早くその場から逃げることを考える」というのだ。 リスクを避けたいはずのヤクザだが、狙ったビルが暴力団組織とは何の関係もない建物だった、襲撃する事務所を間違えたという事件が、結構な頻度で起きている。それはなぜなのか、A氏にその理由を尋ねると、「撃ち込みなどを実行する者と事前に場所などを下調べする者は別だからだ」と答えた。「周りに同じような建物があっても、今はどこの組も何台もの監視カメラを付けているので、実行者はその建物かどうかゆっくり確認することができない。建物の前を何度も行ったり来たりすれば、その時点で危なくなる」 通り沿いに似たような建物があっても1つ1つ確認することはできない。これだと当たりを付けて狙うため、間違いが起きるというのだ。ヤクザなりのリスク回避に巻き込まれた結果ということだろうが、被害者にとってはひどい話だ。「人がいても、行ってしまえばやるしかない。バイクだと現場に行きやすく逃げやすいが、コケて横転する危険もあるから逃走時は要注意だ。誰もいなくても、イザ!という時に拳銃が不発で弾が出ず、大慌てで逃げ帰るようなことも起こる」 暴力団事務所等への襲撃では、今回のように車が突っ込むことも多いが、ドアやシャッターに拳銃が撃ち込まれることもある。そのような時、実行犯は前もって襲撃から逃走するまでを何度もシミュレーションをすることになる。シミュレーション通りに実行し逃走するには、襲撃現場に人がいない方が安全で確実になのだ。「あるヤクザ映画で、最後に投げようとした手榴弾が湿気で爆発せず、組長が撃たれて死ぬというのがあった。誰もあんなことにはなりたくないんでね」とA氏は話す。 敵対する事務所に勢いに任せてむやみに突撃するのは、今や映画やドラマの世界でのことらしい。ヤクザの襲撃も、彼らにとってできるだけリスクが低い方法が考えられているということらしい。
2022.05.12 07:00
NEWSポストセブン
ウクライナの首都キーウ近郊の損壊した建物(共同通信社)
戦争に乗じた「ウクライナ応援グッズ」 暴力団組織が新たなシノギに
 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、コロナ禍で収入源が激減したヤクザが目を付けた新たな“シノギ”について、暴力団組織幹部のA氏に話を聞いた。 * * *「目ざといやつらは、ウクライナで儲けている」 ある暴力団組織の幹部・A氏はそう語り、ネットで販売されていた商品の1つをスマホで見せてくれた。「コロナ渦にウクライナの戦争が重なり、ヤクザらしい仕事は何一つない。定期的にあった組や仲間からの電話連絡もほとんどなくなった。たまに電話があってもお互いに挨拶で終わり。ヤクザは今、本当に暇だ。神戸山口組も静かになってしまって、めぼしい情報もほとんどない。抗争があって、注目されてこそヤクザなんだが、最近は週刊誌の話題にもならない」と彼は嘆く。 4月上旬、麻薬の密輸や地対空ミサイルを不法に売買しようとした疑いで、米司法当局が日本の「ヤクザ」幹部らを逮捕したと報じられた。だが、「一瞬周囲はざわついたが、誰もあんなやつは知らない」という。「麻薬も武器も、東南アジアでなんとでもなる。本当のヤクザなら、わざわざ米国になんていかない。俺のような本物のヤクザなら、そもそも米国には入国できない」(A氏・以下同) この数か月、どこぞの組から破門状や絶縁状が出たという話は聞くが、暴力団が絡んだ大きな事件は耳にしない。六代目山口組と神戸山口組の抗争も、一時は銃撃事件が各地で起こり警戒されたが、今は影を潜めている。 コロナ過で飲食店などが休業や閉店を余儀なくされ、極道界ではみかじめ料に代表されるシノギと呼ばれる収入元が激減したと言われる。そこで彼らヤクザはあちこちにアンテナを張り巡らし、儲かりそうなネタを探し回る。タピオカが流行ればタピオカ店を出し、マスクが必要になればマスクを販売するが、ブームが終わればさっさと引き払い、別の儲かりそうなビジネスを探し出す。そしてA氏が目を付けたのが、ウクライナ応援グッズだ。「みんな色々考えていて、目ざといやつは動きも早い。俺も若いのに『ウクライナ関連のTシャツでも仕入れて売れよ、儲かるぞ』と言ったが『本当に売れるんですかぁ?』と話半分ですぐに動かなかった。さっさとやったやつはネット販売でひと儲けしている」作りが悪くても儲かる ウクライナ応援・支援と銘打ったグッズはいくらでもあるという。「多いのは国旗だ。手旗ぐらいのサイズの物からワッペンやバッジまで、大きさも値段もさまざま。売りやすいのはTシャツやトレーナーだろう。ロシアのウクライナ侵攻後、すぐにネット販売されていたTシャツは、200~300枚があっという間に完売していた。あれは儲かっただろう」 白いプレーンな形に黄色と青のウクライナ国旗が胸の部分にプリントされたTシャツが、3000円ほどで売られていたらしい。 ネットで売られているグッズは、暴力団と関係がないものがほとんどだ。実際に販売価格のいくらかを、ウクライナ大使館などに寄付している業者もある。だが中には、これを儲けの機会と捉え、グッズ販売に乗り出す輩や暴力団関係者もいるという。A氏が説明する。「例えばTシャツの場合、韓国や中国から白のシンプルなものを原価数百円で仕入れる。どこで作られていても構わない。要は安く仕入れることが肝心。そのTシャツに簡単にデザインしたウクライナの国旗をプリントして売るだけ。Tシャツなら送料も安いしね」 品質やデザインにこだわる必要はない。あくまでウクライナを応援するという目的のグッズのため、縫製が多少悪かったとしても、わざわざクレームを言ってくるような客はいないという。販売価格は原価の数倍だろう。儲かるのは当然だ。 応援グッズをネットで探すと、タオルや帽子、バッジにマスク、コップに箸まで販売され、値段も数百円から数千円までまちまちだ。どの商品にも、応援、支援、サポート、寄付、義援金にチャリティと、ウクライナ関連をアピールする大きな文字が記されている。「店側にその気がなくても、商品や販売ページに『ウクライナ応援』と書けば商品が売れる。買った客は自分がサポートした気になり、商品を身に付けていれば応援しているというメッセージにもなる。実際は、寄付すると書いてあっても、本当に寄付するかどうかは店次第で、買った客は確認のしようがない」 商品によっては「ウクライナ応援」とだけ書かれ、それ以外は何の説明もないものも多い。中には、“支援するために祈る”と説明されている商品や、“ウクライナ応援キャンペーン”と銘打って値引きをアピールしながら、その値引き分は購入者が自分でウクライナ支援に使うよう記したものもあり、「これは在庫一掃のための便乗商法では?」と思うような業者もある。 A氏がグッズを販売するとしたら、商品ページにはどう書くのか聞いてみると、彼は真面目な顔でこう言った。「もちろん『ウクライナ応援』としっかりアピールするよ。ただ、『応援』とは書くが『支援』とは書かない。支援と書くと実際に何かしないといけなくなるからね。『寄付』も面倒だからダメ。寄付と書くと、寄付しなければ客を騙したことになるし、『どこに、いつまでに』と書かなければ問題になる可能性もある。ヤクザは警察から何をケチつけられるか分からない。ただ、俺は心からウクライナを応援しているよ、応援は心だから」 最後にA氏は、「人も俺も応援、支援という言葉に弱いんでね」と笑った。
2022.04.24 07:00
NEWSポストセブン
アイチ・森下安道伝 山口組最高幹部との絵画取引とオークション会社の買収
アイチ・森下安道伝 山口組最高幹部との絵画取引とオークション会社の買収
【連載『バブルの王様』第二部第6回】貸付総額1兆円超のノンバンク・アイチを率いた森下安道の交流範囲はバブル紳士にとどまらず、闇社会にも及んだ。その人脈の中核にいたのが、日本最大の暴力団、山口組の最高幹部だ。『バブルの王様 アイチ森下安道伝』の第二部第6回、ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(文中敬称略)【写真】取り立ての厳しさから「マムシ」と呼ばれた森下安道氏 * * *「瀧澤さんは絵が好きでね、うちのアスカ(インターナショナル)にもよく来てもらったけど、あるときオークションに行きたいというので、連れて行ったんですよ」  生前の森下安道が、そう話したことがある。瀧澤とは、元山口組最高幹部の瀧澤孝のことだ。江戸時代から続いた「國領屋下垂一家」の八代目総長である瀧澤仁志が、田岡一雄三代目組長に取り立てられ、組織は山口組直系二次団体となる。そのあとを継いだのが、実弟の孝だ。瀧澤は竹中正久四代目組長体制に反旗を翻した一和会との「山一抗争」の実績を買われ、五代目の渡辺芳則組長体制で若頭補佐に就く。文字通り若頭補佐は、山口組ナンバーツーの若頭を支える執行部の一員である。瀧澤は國領屋下垂一家を「芳菱会」と改め、関東ブロック長を務める山口組大幹部の一人として、斯界にその名を轟かせてきた。 六代目山口組組長の司忍とともに1997(平成9)年に起きた組員の拳銃所持事件で共謀共同正犯に問われ、逮捕されたこともある。その保釈保証金が司の10億円を上回る12億円だった。ちなみに保釈金の史上最高額は、牛肉偽装事件で身柄を拘束されたハンナングループの浅田満の20億円で、2番目が日産自動車特別背任事件のカルロス・ゴーンの15億円である。  美術品コレクションが趣味だった山口組の瀧澤は、やがて森下と親しくなった。その瀧澤本人が山口組五代目組長体制の発足する少し前、組長を確実視された渡辺に絵画をプレゼントしようとしたという。冒頭の森下の話は、瀧澤からプレゼント用の絵画選びを相談されたという意味である。 渡辺はもともと瀧澤と同じ若頭補佐として、四代目組長の竹中に仕えてきた。1985(昭和60)年1月、組長の竹中とナンバーツーの若頭中山勝正が暗殺された。世にいう「山一抗争」が勃発する。  山口組では暫定執行部体制を敷いて渡辺が若頭に就任し、抗争の陣頭指揮をとった。当初、優勢なのは一和会だったが、次第に山口組という暴力団社会の金看板に押されて形勢が逆転し、1989年3月には白旗をあげた。  そしてこの山一抗争で一和会を壊滅に追い込んだ若頭の渡辺が、次の山口組五代目組長の座を約束される。事実、渡辺は抗争終結の翌4月、五代目組長に昇りつめた。瀧澤の絵画プレゼントは、この間の出来事である。  上司や得意先に対する付け届けやプレゼント攻勢は世の常といえる。そこに一般社会と暴力団の世界との違いなどない。渡辺は夫人にブティックを経営させてきたが、山口組幹部の夫人たちはその店に通い、高級ブランド品を競って買った。 その渡辺自身もまた、絵画が好きだったのであろう。少なくとも瀧澤はそう考え、青い目の描かれた加山又造のシャム猫の原画を贈ろうとしたという。億単位の高価な絵画で、なかなか手に入らない貴重な人気作品だ。  瀧澤は絵画選びを兼ね、渡辺を東京に招待して接待を繰り返した。その接待場所が、アイチの開発した千葉県君津市の上総カントリークラブだった。1984年11月のオープンセレモニーにジャック・ニクラウスが来日し、話題を呼んだゴルフ場である。 森下自身、ゴルフに目がなく、バブル紳士たちと賭けゴルフを楽しんできた。山口組の渡辺ともいっしょにラウンドしたのか、そう尋ねてみた。が、さすがにそれは控えていたようだ。森下は言った。 「瀧澤さんとはたしかに親しかったけど、さすがに世間がうるさいからね、そんなことはできませんよ。うちのヘリは使ってもらっていたけどね」 これまで書いてきたように、1980年代半ばは森下に対するマスコミの関心が集まった時期にあたる。音響機器のアイデン倒産をはじめ、中江滋樹の投資ジャーナル詐欺やコスモポリタンによる株買い占めなど、森下の周囲では立て続けに事件が起きた。  今でこそ、反社会勢力と認定されればゴルフ場に立ち入れないが、当時は暴力団組長が子分たちを引き連れ、平気でラウンドした。といっても、さすがに山口組組長といっしょにゴルフをしているところをマスコミに報じられたら、大騒ぎになる。 おまけに血なまぐさい山一抗争の真っただ中だ。前述したように、四代目組長の竹中が愛人のマンションロビーで暗殺されたのが、上総CCオープン3カ月後の1985年1月だ。日本の暴力団史上最大といわれた抗争は、そこから1989年3月までおよそ4年にわたった。渡辺の五代目組長就任は、山口組が圧倒した抗争終盤に確実視されていたから、アイチの上総CCを行きはそのあたりの出来事だろう。  ちなみに1987年8月には、田園調布の森下邸に銃弾が3発撃ち込まれた。原因はアイチが融資していた東村山市の特別養護老人ホーム「松寿園」とのトラブルだとされ、山一抗争とは無関係だろうが、ただでさえ暴力団との関係が取り沙汰されてきたアイチにとって、山口組との接点が明るみに出てはいかにもまずい。森下自身が上総CCで彼らに付き合わなかったのは、そうした事情があったに違いない。森下に代わり、アイチの社員たちが彼らの世話を命じられた。 静岡県浜松市を根城にしてきた芳菱会総長の瀧澤は、東京にもプライベート事務所を置いていた。事務所は赤坂にあるANAインターコンチネンタル東京の裏にあり、本人は上京すると、内幸町にある帝国ホテルのスイートルームに宿泊した。 「森下会長、(若)頭が東京に来るので、悪いけどヘリを用意しといてんか」  瀧澤は森下にそう伝え、森下はアイチの社員にゴルフ接待のアテンドを命じた。ラウンドするメンバーは渡辺と瀧澤、そこにたいてい組幹部ではない紳士が加わったという。3人はボディガード兼運転手の組員たちとともに早朝6時に帝国ホテルを出て、ヘリポートのある木場に向かった。アテンド役のアイチの社員が、ヘリポートで山口組一行の乗ったベンツ3台を出迎え、いっしょにゴルフ場へ飛んだ。ヘリの飛行時間はせいぜい40分ほどしかないが、アイチの社員たちはさすがに緊張した。「お風呂になさいますか」  初めてのラウンド後、支配人がそう尋ねたこともあったという。気をきかせたつもりなのだろう。すると瀧澤が笑い飛ばした。 「ばか、俺たちは風呂に入らないんだよ」  ゴルフ場はとうぜん貸し切りなのだが、やはり同伴の紳士に背中の刺青を見られることを気にしていたのだろう。山口組一行はゴルフを終えると、すぐにヘリで木場まで戻ってきた。そこで組員たちが出迎え、ホテルに帰った。山一抗争の終盤、そんな光景が何度か繰り返されたのだという。他のバブル紳士にない独特な人的コネクション もっとも瀧澤が五代目山口組組長を目前にした渡辺のために探し求めていた肝心の加山又造の原画は、なかなか見つからなかったようだ。アイチの幹部社員が明かした。 「たしか日本洋画商協同組合主催のオークションの下見会が、麹町のダイヤモンドホテルで開かれるというので、そこに瀧澤総長をお連れした覚えがあります。ヤクザの名前ではオークションで絵を競り落とせません。なので、アイチで買って手数料をもらって渡そうとしたわけです。それでホテルの会場前で待ち合わせしていると、瀧澤総長が白いマスクに真っ黒いサングラスをかけてベンツから降りてきた。子分衆に『おまえらはここで待ってろ』と言い、車の中で待機させていました。だけど、本人がいかにも怪しい。だからサングラスとマスクを外し、帽子だけをかぶってもらって下見会場に入りました」 結成65年の歴史ある日本洋画商協同組合は銀座にギャラリーを構え、洋画の出版・編纂のほか、オークションも主催してきた。だが、暴力団組長は本番のオークションに参加できない。そのため、あらかじめ会員の画廊向けに催される下見会で目当ての加山の絵画を探そうとしたわけだ。瀧澤を案内したアイチの幹部社員が、その光景を思い起こしてくれた。 「下見会にお連れしたとき、そのなかにたしかに加山又造の絵が20点近くありました。絵のサイズが小さすぎたり、大きすぎたり、雑な描き方だったり、いろいろありました。ほれぼれする加山作品もあった。だけど、シャム猫の原画とは違ったようでした。だから、結局あきらめたのではないでしょうか」 瀧澤が渡辺に絵画をプレゼントできたかどうか、それは森下に聞いても、わからないという。  貸金業からスタートし、ゴルフ場開発、さらには絵画ビジネスまで手を広げた森下の交友相手は、むろん暴力団だけではない。森下はむしろ絵画ビジネスのおかげで、他のバブル紳士にない独特な人的コネクションを築いた。  森下は1989(平成元)年9月、美術界における2大オークションの一角である英「クリスティーズ」の大株主として登場し、世界を驚かせた。豪州の富豪、ロバート・ホームズアコートの株を3300万ポンド(76億円)で買い、総株式の7.3%を占める第2位の株主に躍り出る。事実上、個人の筆頭株主といわれた。 クリスティーズは1766年12月、美術商ジェームズ・クリスティーがロンドンに設立したオークション会社だ。18世紀のフランス革命の結果、パリに代わりロンドンが世界の美術品貿易の中心となり、英サザビーズとともに世界中の美術品の競売を手掛けるようになる。1973年にロンドン証券取引所に株式を上場し、その後、オーナーがたびたび入れ替わった。その一人が日本の森下だったのである。  ちなみにもう一つの大手サザビーズはクリスティーズに先立って1744年3月11日、ロンドンで創業した。もとは英ジョン・スタンリー卿の蔵書を売却するためのオークションだ。 世界の2大オークション会社の買収に乗り出すまでになった森下は、ますます美術品の売買にのめり込んだ。そのために日本の大学を卒業したばかりの三女の雅美(仮名)をパリのクリスティーズに“留学”させたことまである。彼女をニューヨークの社交界「インターナショナル・デビュタント・ボール(舞踏会)」にデビューさせた前後のことだ。森下自身がこう話した。 「娘に美術品の取引を覚えさせようと思ってね。やっぱり海外に住んでないとそれがわからないから、しばらく雅美をクリスティーズに預けたんですがね」  雅美はスタジエという立場で、1年半ほどクリスティーズに勤めた。いわばオークションの見習いである。折しも、東京・青山でアスカインターナショナルを設立した頃だ。森下はクリスティーズやサザビーズに頻繁に通い、美術品を手当たり次第に買い漁り、雅美に対しあわよくばフランス人との結婚を望んだ。青山に設立したアスカインターナショナルは、瞬く間に日動画廊を抜き去り、美術品取扱高が日本一になった。年4回のオークションで160億円の買い物 クリスティーズとサザビーズは春と秋にローテーションを設定し、ロンドンとニューヨークでそれぞれ2~3週間かけてオークションを実施する。夏は画商やそのスポンサーが休暇をとるため、オークションも休む。それ以外の季節には、たまにエキストラと称した特別なオークションがおこなわれる。画商たちは、まず春と夏のそれぞれのオークション期間、ロンドンとニューヨークにひと月半以上張り付き、会場に通う。森下はそのための拠点としてニューヨークのトランプタワーを購入した。 世界の名だたる画商のなかでも、クリスティーズのオーナーの一人になった森下は、特別待遇を受けた。やがてクリスティーズのオークション会場に専用の電話回線を引きこみ、日本から向かった幹部社員に指示を出した。派遣されたアイチ社員の一人が、秘書室長からアスカインターナショナルの社長になった郡清隆だ。 「1980年代の終わり頃は、クリスティーズとサザビーズでおこなわれる春と秋のローテーションのオークションはもちろん、エキストラのときも必ずニューヨークとロンドンに行っていました。飛行機代が何百万円かかろうが、絵の値段に比べると安いものですから。コンコルドで欧州から米国に飛んだこともあります」 郡がバブル全盛期のアスカインターナショナルについて語った。 「オークションの会場に専用の電話線を引いていたのなんて、うちだけでした。オークションは昼と夜の2部制で、昼間は10時から6時くらいまで8時間、夜はそのあと7時前から始まり、2時間ほど続きます。とくに長い昼のオークションでは、他の画商たちは会場に張り付いていなければならないので大変なんですが、私たちは日本にいる森下会長からホットラインで指示されるから楽でした。『5番目に出てくるルノワールを狙え』とか『7番目のシャガールだ』と命じられ、その順番が来るまで席を外せる。なので、合間に外でサンドイッチを食べたり、コーヒーを飲んでいました」 オークションに臨む画商の後ろには、通常、それぞれ買い手となるスポンサーがついている。だが、オークション会場へ電話できるようなホットラインなどない。スポンサーの指示を受けられないため、会場を離れられない。一方、アイチの郡たちは日本の森下と電話でつながっている。適当にオークション会場を離れ、狙い目の絵画が出る頃合いを見計らって戻り、札を入れた。郡が続ける。 「クリスティーズの会場には、職員が『〇××が札を入れている』などと競売のコンディションについて状況を説明する電話が備えてありました。その会話はもちろん英語で、職員でもない私たちだけが日本語で森下会長とやりとりしていたので奇異に感じたのでしょうね。それで、『なぜお前たちだけ専用回線の電話をつなげてもらっているのか、不公平じゃないか』と他の画商からクレームがついたことがありました。でも、クリスティーズから『あの人たちは株主さんですから』と説明をしてもらい、納得していました。なにしろ私たちが1回オークションに行けば、40億円前後の買い物をするわけです。特別扱いなのは当然だったかもしれません」 郡たちはアスカインターナショナル指定席の専用回線から電話をかけながら、欧米の名画を大量に落札した。おまけに、そんな特別待遇は大株主となったクリスティーズだけではない。森下たちはやがてサザビーズでも、同じことをやり始めたという。 「クリスティーズとサザビーズで春秋2回ずつ、最低でも年に4回のオークションがあります。われわれは1回40億円として、160億円の買い物をするわけです。トータルでいえば、2つのオークションで2000億円以上になる。なにしろルノワールの絵だけで169枚も落札しました。で、サザビーズでも、やたら大きな買い物をする森下会長がクリスティーズの大株主だと知り、電話回線を引かせてくれたわけです。そのくらいのインパクトはあったと思います」(同前・郡) サザビーズでいえば、1989年10月18日、アスカインターナショナルによる35億5000万円分の落札が日本で評判になった。マッシュルームスープ缶で有名なキャンベルスープ元会長のドーランコレクション44点のうち、7点。830万ドルでピカソの「オー・ムーラン・ルージュ」他1点、715万ドルでゴッホの「海の男」、374万ドルでモネの「セーヌ川岸」などを落札した。  森下はとりわけイブニングセールと呼ばれた夕方の出ものを好んだ。10億円から100億円までの一級品絵画が30点前後出品される。日本は真夜中だが、アイチ社員が電話で起こすと森下が即決した。もちろんすべてを買うわけではないが、イブニングセールの扱い高は1500億円ほどに上る。「それを大量に買うアスカ1社の送金額は、日本でおこなわれる全てのオークション1年分の扱い高をはるかに超えていました。日本のオークションはせいぜい年180億円ほどの取り扱いですから、足元にもおよびません」(郡)  バブル全盛期の1990年5月、日本人が125億円でゴッホの「医師ガシェの肖像」、119億円でルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を落札して話題になった。これは大昭和製紙名誉会長の齊藤了英の命を受けた銀座の小林画廊による落札だった。ZOZOTOWN創業者のバスキアの絵の購入額が123億円だから、それが日常的におこなわれているようなものだ。森下はこうして買い集めた絵画をバブル紳士たちに売りさばいていった。(第二部第7回へつづく)【プロフィール】森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ―「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『菅義偉の正体』『墜落「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』など。※週刊ポスト2022年4月22日号
2022.04.19 19:15
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