国内

ビール税の歴史 常に「取る側の論理」に翻弄されてきた

「取る側の論理」に翻弄され続けたビール税の歴史

 来年度税制大綱に「ビール税」の改正が盛り込まれる。これは、現在ビール77円、発泡酒47円、第三のビール28円の税額を55円に統一しようというもの(いずれも350mlあたり)。ビールは値下げとなるが、庶民の味方である発泡酒や第三のビールは値上がりする計算となる。

 ビール税の歴史は、まさに「取る側の論理」に翻弄されてきた。酒税の歴史は14世紀後半の室町時代にまで遡る。室町幕府3代将軍の足利義満が、酒麹販売業者に課税したのが起源とされる。

 現代に繋がる酒税の始まりは1873年、地租改正条例制定により1500種類以上あった幕藩体制下での税制が整理されるなか、酒類税が国税として残ったことによる。以降、酒税が国の財源に占めるウェイトは高まっていく。

 1896年に酒造税法が制定されたが、これは日露戦争の戦費調達の財源として酒類が狙い撃ちされたためだった。1901年に麦酒税(ビール税)が導入され、これまで清酒にのみ課されていた対象が拡大。税収も激増し、酒税は国税のなかで最大の税収源となった。税制が専門の立正大学法学部客員教授の浦野広明氏が解説する。

「その後も戦費調達のたびに酒税は引き上げられていきます。ビールは国民的な人気を得ていったので増税によって容易に税収増を図れたことから、政府や官僚らから、ビール税は“財政の玉手箱”と呼ばれるようになり、この性格は今に引き継がれます。

 敗戦後の1953年に現在の酒税法が制定されましたが、ビールの税率は第2次大戦時の高い水準に据え置かれたままでした。さらに1975年以降の10年間で4度の増税が行なわれるなど、ビール税はいつも増税の対象とされてきました」

 消費税導入前の1984年、大蔵省主税局長は国会で「なぜビールの税率が欧米より高いのか」という質問に、こう答えている。

「我が国のように消費税の体系を持たない国では、どうしても酒税の税負担が高くならざるを得ない」

 しかしこれが方便だったことが1989年の消費税導入で明らかになる。導入後、日本酒やウイスキーは減税されたのに対し、ビールの税率は据え置かれた。1997年の消費税率引き上げ時にもウイスキーの減税が実施されたが、やはりビールは変わらなかった。

「理由は、旧大蔵省が“打ち出の小槌”のビール税を温存しておきたかったからと言われています。いまの財務省に連綿と受け継がれる“取れるところから取れ”のご都合主義です」(前出・浦野氏)

※週刊ポスト2016年12月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
かつて問題になったジュキヤのYouTube(同氏チャンネルより。現在は削除)
《チャンネル全削除》登録者250万人のYouTuber・ジュキヤ、女児へのわいせつ表現など「性暴力をコンテンツ化」にGoogle日本法人が行なっていた「事前警告」
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン