免許返納によって認知症リスクが高まると、それが不幸な事故につながっていく可能性もある。認知症になった高齢者が免許返納したことを忘れて車に乗ってしまい、事故を起こすリスクがあると指摘されている。
具体的な対策としては、免許返納後も高齢者が不便を感じないような交通システムの整備を行なうことが不可欠だ。
「住民の移動手段を確保するために地方自治体が提供しているコミュニティ・バスはまだまだ本数が少なくて不便。自動運転により走行本数を増やす、人工知能を使って上手な配車サービスのシステムを作るなど、少ない予算でも高齢者の活動が維持できるような環境作りが必要です。
高齢者向けの電動カートや電動車椅子のような自分で簡単に乗ることができる移動手段の導入も提案されていますが、その普及も進めなければいけません」(伊藤氏)
そうした議論を置き去りにした「返納キャンペーン」だけでは、不幸な事故を減らすことはできないのではないか。
※週刊ポスト2016年12月9日号