「日本経済は他の国と違ってトランプ政策で大きな恩恵を受ける。現在の日本株の急騰は明らかにトランプショックによる“棚ぼた”です。しかも、株価の上昇率はニューヨークより東京市場の方が大きい」
そう指摘するのは外資系証券会社の調査部長などを歴任した玉川大学経営学部教授の島義夫氏である。“棚ぼた株高”の仕組みはわかりやすい。
「トランプの経済政策の公共事業と大減税はいずれも巨額の財政資金が必要で、米国債を大量発行しなければならない。国債を増発すれば米国の金利が上がる。金利が上がれば資金が米国に流れ込んでドル高・円安を促し、円安になれば日本の輸出企業が潤う。それがすでに予測されているから為替市場で急激な円安が進み、日本の株価が急騰した」
棚ぼた効果は一過性のものではない。今後、トランポノミクスが本格化するにつれて日本へのメリットは一層大きくなっていく。世界経済の分析に定評がある投資ストラテジストの武者陵司氏が語る。
「トランプ政策の基本は“強い経済、強いドル”です。ドル高は米国と競合する商品を持っている国、とくに自動車対米輸出国や多くのドル債権を保有している国に恩恵をもたらす。どちらにもあてはまる日本が最大の受益国になるでしょう。
日本が海外に持つ対外純資産は世界最大の2.8兆ドルに達し、為替が10%ドル高になるだけで円ベースで約25兆円の差益が生まれる。具体的には海外証券投資の元本増加や日本企業の海外子会社から本社への利益還元が大きく増える」
加えて米国の法人税減税の恩恵も大きい。元シティバンク為替トレーダーの西原宏一氏が言う。
「間違いなく米国企業の収益を改善させる。日本企業の米国現地法人も減税分が利益になるから、日本本社は何もしなくても連結決算で業績が押し上げられる。いまや日本の有力企業の大半が米国に進出している。そうした企業は企業努力なしでドル高(円安)と減税のダブルで利益が増える」
「米国ファースト」を掲げるトランポノミクスの本質は、実は結果的に「日本ファースト」なのである。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号