故郷に菩提寺があっても、法要や法事のためにわざわざそこから僧侶を呼ぶのは大変だ。
「田舎に寺はあるが、誰も住まなくなった実家はもう取り壊していて、法事のためだけに帰省するのも大変でした。そんな時に都内で施設に入っていた父親が他界。最初は田舎から住職を呼ぼうと思いましたが、お布施をいくら包めばいいのか、戒名料はいくらかとか、その後の付き合いは、と考えるうちに面倒になり“お坊さん便”を頼みました」(50代・自営業)
大都市の住民の意識が変わっていくなかで、地方では多くの寺院が存亡の危機にあるという。
「仏教界の実態は深刻です。檀家の減少や、墓の都市への改葬などによって、貧困にあえぐ寺院が増えています。
例えば浄土真宗本願寺派が2009年に実施した調査では、村落にある寺院の60%以上が年収300万円以下でした。他の宗派でも似たりよったりでしょう。“お坊さん便”に登録する僧侶たちが増えている背景には、“食えない僧侶”の増加があるのは間違いありません」(鵜飼氏)
※週刊ポスト2017年4月21日号