「ただ、会いに行ってもやっぱり怒られる(苦笑)。おばちゃんの顔を見るとついつい愚痴っちゃうんですが、この前も『新しい職場が不安だ』って言って、『そんなの、みんなそうだ』って厳しく言われました。でも、なんか元気が出るんです。だってこの年になると、60才以上年の離れた人に怒られるって、なかなかないですからね。…寂しくなります」(下川さん)
思い出してほしい。通常、学校の購買部といえば、お昼時のみ開くものだったはずだ。しかしここは違う。「部活を終えた生徒がお腹を空かせてはかわいそうだ」と、艶子さんは午後7時まで店頭に立ち続けたのだ。
「大変でしたね」――艶子さんが働いてきた環境を思って、記者が思わずそんな感想をこぼすも、艶子さんは「何が大変?」と不思議そうな表情を浮かべた。
この購買部は木造で、入り口は開けているため、雨の日や風の強い日はもちろん、冬になれば苛酷な職場となったはずだ。
まして艶子さんは、要介護1の認定を受けている。10年前に脳梗塞を患い、その後パーキンソン病を発症し、手足に震えがあるのだ。そのため杖は欠かせないし、椅子から立ち上がることさえもひと苦労。また91才という年齢ゆえ、耳も遠く、大きな声で会話をしなくてはならない。
ここ数年は、週3日デイサービスに通い、火曜と木曜の2日間だけ購買部に立っていたという。それでも艶子さんは「一度も嫌になったことはないですよ」と、ニコニコしながら何食わぬ顔で言った。
※女性セブン2017年5月4日号