母の無関心は相変わらずで、「どこに泊まっているの」とも聞かないし、「高校くらいは卒業して」とも言いません。

 父にいたっては、家で会っても「あ」とか「お」とか言うだけ。「金」と言えば、決まって1000円札を1枚くれました。父と私の交流は後にも先にもそれだけでした。

 私が23才の時、父は車の事故で突然亡くなりましたが、正直言ってもう母のあの声を聞かずに済む、とほっとしたものです。

◆不幸のどす黒い花を咲かせた“運命の男”

 不純異性交遊で私は学校からいつ「退学」を言い渡されてもおかしくなかったのに、そうならなかったのは、30過ぎの独身の担任のおかげです。放課後、呼び出され、「出席日数が足りないけどどうするんだ」と言われ、「学校じゃない場所で相談に乗ってほしい」と言うと、さっそくでした。

 高校から離れた駅に担任は車でやってきて、そのままラブホテルへ。結局、担任とは卒業までずるずると関係が続きました。他の男と同じように好きでも嫌いでもなかったけど、セックスはとても上手でした。

 思えば、あの頃は気まずくなるとそれ。都合が悪くなるとそれ。気分がいいとそれをしていました。実際、2人きりになって服を脱ぐと、男は、行為の手順など、1人として同じ人はいません。「この人はどうするんだろう」と思うと、それだけでわくわくしました。

 ところが卒業間近に、私を好きだと口説いた、30過ぎの小柄で真面目なサラリーマンと寝たのが余計でした。彼は、たった1回ですぐに、「結婚するから親に挨拶したい」と言い出したのです。

 そんな気はさらさらない私は、男から逃げるように東京の駅ビル内にある会社に就職。彼は、「忘れられない。好きだ」と言って、何度も私の職場に訪ねてきましたが、その「好き」という感覚が私にはわかりません。それどころか、彼の顔を見るだけで吐き気がします。

 あえぎ声を毎晩聞かせた両親が、私の不幸の下地を作ったとしたら、そこにどす黒い花を咲かせた“運命の男”は、間違いなく彼でした。

〈次回につづく〉

※女性セブン2017年5月11・18日号

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