なぎらには、消えゆくもの、終わりゆくものへの愛惜の念がある。そして、決して声高に叫ぶことはしないが、その裏には、愛着あるものが消えていくこと、終わっていくことへのささやかなる抵抗もあるのではないか。
そんななぎらがこの春から出演しているのが、平日午後に生放送されているNHKの情報番組『ごごナマ』。木曜日のレギュラーで、昭和の時代を懐かしむコーナーなどを担当している。番組のタイトルロゴはなぎらが書き、テーマ曲はなぎらの代表曲のひとつ『フォークシンガー』。1983年の作品で、「強く昭和を感じさせる」として番組のプロデューサーが選んだ。
なぎらは中学時代から美しいハーモニーとギター伴奏が特徴の「カレッジ・フォーク」の影響を受け、高校に入るとグループを結成。しかし、2年生になる頃、高田渡、岡林信康、高石ともやらの社会的メッセージの強い「アングラ・フォーク」に衝撃を受けた。
グループ名は『シャンゼリゼ』から『真・民族平和民謡主義派集団・心の歌』へ変更。そして1970年、高校3年生の時にフォークソングの野外イベント『第2回全日本フォークジャンボリー』に飛び入りで歌うと「次の世代を担うフォーク歌手」と評価され、2年後にアルバムデビューを果たす。
だが、学生運動が衰退するなど時代が大きく変わり、音楽の人気もフォークからニューミュージックへと移った。フォークでは生活できず、建設現場で働き、飲み屋を開いた。そんな生活が何年も続き、家でヤケ酒をあおっていたある晩、ドラマへの出演依頼を受けた。『2年B組仙八先生』(TBS系。1981年春から1年間放映)だ。以来、ドラマ、映画、バラエティー番組、ラジオなどから声が掛かるようになった。