──てっきり油の摂りすぎが肥満になったり糖尿病になったりするものだと思っていました。
山田:脂質やたんぱく質は食べれば食べるほど食後の血糖を上昇しにくくするため、高血糖により引き起こされる糖尿病や、それに伴う合併症リスクはむしろ低減されると考えたほうがいいでしょう。
日本では牛肉や豚肉といった動物性脂(飽和脂肪酸)の摂取が動脈硬化症に悪いとする論文はどこにもありませんし、むしろ摂取量が多い人のほうが、脳卒中を中心に動脈硬化症の発症率が少ないとするデータが複数あります。また、米国や豪州では、飽和脂肪酸を減らさせたら、かえって心臓病や死亡率が上昇したという論文が報告されています。つまり、肉はどんどん食べたほうがいいのです。
そのため、アメリカでも2015年に脂質制限の上限を撤廃する新たな食事ガイドラインが出され、40年間の栄養政策が覆されました。すなわち、脂質制限をすることが何ら健康上のベネフィットをもたらさなかったということです。
──脂たっぷりの肉や魚をどんどん食べても太らないと聞けば、ダイエットも継続できると喜ぶ人がたくさんいるでしょうね。
山田:トランス脂肪酸や古い油などを除けば、基本的にすべての油は満腹になるまで摂取してOKです。現に私もかなりの大食漢なのですが、糖質を抑えながら油は好きなだけ摂る食生活を8年間続けた結果、体重は10kg減って学生時代のベスト体重をキープしています。
朝からオリープ油をたっぷりかけた野菜に、大きなステーキをガッツリ食べることもありますしね。大事なことは、お腹をすかせた状態を我慢していると、かえって健康によくないということ。だから、カロリー制限は“大罪”なのです。
●やまだ・さとる/1970年生まれ。北里研究所病院・糖尿病センター長。日々の糖尿病治療においてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を追求していく過程で糖質制限食に出会う。2012年『奇跡の美食レストラン』(幻冬舎)を刊行、2013年に緩やかな糖質制限食=ロカボの考え方を普及させ、一般社団法人「食・楽・健康協会」も立ち上げる。
■撮影/山崎力夫(山田医師)