60才からの人生で最も困るのはお金の問題ではなく、“何をしていいのかわからない”ことだと語るのは、『定年後』(中公新書)著者で、楠木ライフ&キャリア研究所代表の楠木新さんだ。
「定年後の人生を取材してみると、最初は解放感に満たされるものの、すぐに飽きて孤独にさいなまれる人が多いようです。人間関係や遊びが会社絡みだけだった場合、定年によりそれらが奪われると、居場所がなくなるんです」
働くというのは、社会で認められる場所を作るという意味でも大切なのだ。とはいえ、60才から突然仕事を探し始めるのは実際難しい。求人の有無より、どんな仕事に就いていいかわからないからだ。
「希望の仕事に就くには、50代からの助走が必要。私の場合、“小学生の頃から好きだった文章を書く仕事に就きたい”という思いがあり、50才の時から準備していました。好きなことって意外と変わらない。どんな仕事に就くべきか迷っている人は、子供の時の“好き”を思い出すといいかもしれません」
60才からの仕事探しは、楽しいこと、生きがいになることから選ぶのがいいようだ。
◆60才以降のシニアが熱望されているワケ
60才以降の求人は少ないと思いきや、今、各業界ではシニアの労働力が求められている。 コンビニエンスストア・ローソンでは、60才以降の店員が去年から2割増え、今後も間口を広げる予定だという。
「シニアスタッフは大歓迎です。短期で辞めるかたが少なく、長く働いていただける。社会経験が豊富なので人当たりもいいと評判が高いんです。また、調理業務は、若い人より主婦の方が経験が生かされています」(ローソン・クルー人財開発部千葉寛之さん)