先住民を駆逐し、明治国家に都合の良い防衛と開拓を兼ね備えた「屯田兵」を配した近代北海道のあり様を「内国植民地」と呼ぶ歴史学者も多い。私は中央に搾取された、という被害者感情はない。

 だが、時局の動乱、政局に常に弄ばれてきた北の大地に立つ度、私には得も言えぬ中央への抵抗が芽生えるのである。

 疲弊しつつある夜の函館を視野の一端に入れつつ、既に郷里を捨てた覚悟の私には、いやいや北海道に拘泥する必要などない、との内心の声が響く。しかし人は土から離れては生きられないとは良く言ったものだ。この朽ち行く道南の辺境が、誰の搾取によるでなく再生する姿を夢想して、榎本の蝦夷共和国を唾棄するように、私は急ピッチで羽田行きの飛行機の搭乗口へ急ぐのである。

◆ふるや・つねひら 1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『草食系のための対米自立論』。最新刊は『「意識高い系」の研究』。

※SAPIO2017年10月号

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