「がんの場合、まず食が細くなり、毎日目に見えて痩せてきます。進行すると、今度は限られたものしか食べられなくなるので、栄養バランスが崩れて体がむくむようになる。最後には体が食べ物も水分も受け付けられなくなって脱水症状に陥り、ウトウトしながら眠るように亡くなります」
多くの人は死の間際に訪れる痛みを怖れるが、実際には、死は穏やかで安らかなものであると中村医師は指摘する。
「進行したがんが神経まで侵食すると、しびれるような激しい痛みを伴います。しかし、この痛みは鎮痛剤で和らげることができる。むしろ、大半のケースでは鎮痛剤を打たなくても体が食物を受け付けなくなると、脳からモルヒネが分泌されて、苦痛から解放されるといわれています。
例えば、大腸がんなら多少の出血により貧血を起こしたりするケースが出てきますが、そこまでがんが進行すると、1週間から10日程度で苦しまずに亡くなる人が多い。私が看取った患者たちは、まどろみながら安らかにあの世に旅立つ人ばかりでした」
※週刊ポスト2017年12月8日号