「既婚者の女性パートさんが、仕事が終わっても帰宅しないという事で、旦那さんが店に来られたそうです。ちょうどその日、休みだった店長に電話し確認すると、パートさんを酔わせて家に連れ込んでいた事が発覚しました。旦那さんが問い詰めると、店長は睡眠導入剤を酒に混ぜた事を告白したんです」

 この事件をきっかけに、店で働くアルバイトやパートの女性複数が、店長から飲みに誘われ、その後同じような”経験”をしていた事も発覚。全員が、店長の犯行を“自身の失敗”と解釈し、恥ずかしさから誰にも言えずにいたのである。

 一部の女性に至っては、一度の失敗を逆手に取った店長から何度も肉体関係を迫られて、精神的に追い詰められたケースもあった。被害を受けた女性らは憤慨し、刑事告訴を考えて、店を経営する法人に訴えた。しかし……。

「女性一人につき5万円の“迷惑料”が支払われただけで、それ以外の賠償は全くなし。店長は異動で本社勤務になったものの処分は受けていません。納得がいかず警察や弁護士にも相談をしましたが、いずれも“証拠がない”ということで取り合ってもらえませんでした」

 もし、店長が違法薬物や違法に入手した薬を使用したのなら警察も積極的に取り組んだかもしれないが、ドラッグストアで買える薬を使っていたから捜査されないのだと聞かされた。処方箋の必要がない程度の薬でも、容量として定められているより多く、さらにアルコールと併用させると効き目が強くあらわれることがある。店長は、すでに酔っているタイミングを見計らって女性に飲ませる犯行だったとも囁かれた。

「デートレイプドラッグ」を使った性的暴行は、体内外の遺留物、または映像や写真など、明確に暴行を示す“証拠”が残っていないと立証は難しく、当局も事件として扱わない場合が多いと言われている。被害を証明するためには、できるだけ早く病院等で診断してもらうように、と被害者救済団体もアナウンスをしているが、被害女性にとっては酷としか言いようがない。

 性的暴行を受けた被害者女性にしてみれば、一刻も早く身体中を洗い清めたいはずであるし、どうにか忌まわしい記憶を消し去れないかと願うばかりで「相手を訴える」という考えに至らないことは、火を見るより明らかであるからだ。

 このように、「デートレイプドラッグ」は、ある程度の関係性が作られた状態で用いられる場合が多いことが、複数の告白を聞いたことで特徴の一つとして浮かび上がった。A子さん同様、顔見知りから「デートレイプドラッグ」を使った性的暴行を受けたというのは、関東地方在住の大学生・B美さんだ。

「別れた元カレからしつこく誘われ飲みに行った時、お酒の中に睡眠薬を入れられました。意識のないままに暴行され、写真も撮られて嫌がらせも受けました。翌日に検査に行ったので元カレの犯行が明らかになったのです。謝罪と慰謝料、そして撮影データを全て消すという約束をして解決したんですが、男性が恐ろしくなり、生活に支障をきたすようになりました」

 しつこく迫ってくる元カレだから、という前提もあって少しは警戒していた。だが、まさかこれほど卑怯なことをするとは予想できなかった。不自然なプレゼントなどであれば疑ったかもしれないが、知人として普通にお酒を飲むことはできると思っていたのだ。ところが、その、普通にしていれば大丈夫という思いにつけ込まれ、離席したわずかな瞬間に睡眠薬を混ぜられた。

 このように、ある程度顔見知りの関係であればあるほど、ドラッグを周到に”仕込む”必要はなくなる。相手が無防備に席を離れた隙に”堂々”と、酒などの飲食物に混入させることができるのである。

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