さらに10代はスマホを横にするのも面倒がる子が多いので、縦動画という意味は大きい。秒単位という動画の時間感覚も、「冒頭の数秒でその動画をスキップするかどうか決める」という10代の感覚と合っている。
10代は自己承認欲求が強く、他人にリア充アピールをしたい、自己表現したいといつも考えている。まだ何者でもない年頃だが、同時に人の注目を浴びて、その他大勢とは少し違うと見られたいと願っている。TikTokはそのような10代のニーズにはまり、しかも撮影を極限まで簡単にしたことで敷居を下げたため、人気が高まっているのだ。
◆口パク動画のその先は?
現在、口パク動画をつくれると人気のアプリはどれも、それぞれの動画共有SNSを提供しているが、作成された動画はYouTube、Twitter、Instagramといった他のメジャーSNSへも「#口パク」「#リップシンク」「#tiktok」といったハッシュタグをつけて投稿されている。その投稿には同時に「#●●している人と繋がりたい」というタグがつけられているものも多く、アプリ利用者を超えた世界での認知も広がる可能性を秘めている。
口パク動画アプリをめぐる状況は絶好調で、今後は拡大するばかりのようにみえるが、動画アプリの人気は移り変わりが激しい。たとえば、6秒のループ動画で人気だったVineは2017年1月にSNSサービスを終了、動画作成機能のみを残したVine Cameraアプリへと姿を変えた。収益化が難しかったことも原因だが、若年層を中心とした人気は移ろいやすいことも遠因だった。
15秒間の主役を演じることに夢中になった若年層は一年後、次はどこで主人公になることを夢見ているだろうか。