誰もいない夜の街で、みきは将来についてつぶやく。
「お手本になる人もいない。わからないことしかない」
みきが提示しているのは、男でも女でもなくゲイでもレズでもなく、どこにも所属していない「宙ぶらりんの状態」。そのみずみずしさと苦しさです。宙ぶらりんだからこそ自由であり、不安。でも、諦めて無難な道は選びたくない。
LGBTという時代の潮流を取り込みマイノリティの風俗を描きつつ、かつ純文学に通じる「存在の不安」、人にとって普遍的なテーマをきっちり芯に据えている。見応えがあるのはそのせいでしょう。
役者・志尊さんの自然体の演技が功を奏し、「LGBTとは」「性的少数者の人権とは」などという解説調・説教調でなく、ありがちな共生教育ドラマでもない、秀逸な仕上がりとなっています。
それにしても志尊さんの快進撃がすさまじい。『女子的生活』以外にも1月スタートの話題のドラマに登場。『トドメの接吻』(日テレ系日曜22時30分)ではなんと、髪を赤く染め歌舞伎町のホストに変身。「先輩になつくカワイイ子分」といった役柄でトランスジェンダーのみきとは違うもう一つの姿を見せています。
別々の志尊さんが同時に見られる今シーズンのドラマ。見比べてその違いを味わうのも、役者鑑賞の冥利に尽きるのではないでしょうか。