こうした「男同士の褒め合い」は、だいぶ“盛って”いることがほとんどだ。300万円は大げさかな……と思いながら聞いた。ただ、がっつく印象がなく、嫌みではないのが不思議だった。ボンボンの余裕なのか。

 ナホは、港区女子仲間で「リアクションを任せたら一番」と言われている。そのナホが目を丸くし、手を叩いて声をあげた。

「300万~? さすがー! 私の年収くらーい! やばーい! それを一晩で~?」

 こっちこそ「さすがー!」と言いたくなるリアクションである。それなりに盛り上がって二次会へ。場所は、アメリカ投資家のタワマンだ。一人暮らしなのに3LDK。

 何平米だろうか。100人くらい呼んでもスペースが余りそうなリビングに、大きな真っ白ソファ。全面ガラス張りで、目の前には東京タワー。ライトアップされた東京のシンボルを見ながらシャンパンを開けた。

「このお部屋、ホントすごーい! 家賃聞いちゃってもいい?」とリアクションナホ。

「200万くらいかな」

 サラッと答えた。たしかに、それくらいはしそうだ。飲み代300万も嘘ではないかも…と思えてきた。さっきの褒め合いトークは、大げさじゃないから嫌みに感じなかったのか。

 しばらく飲んで、そろそろ帰ろうかな、という時間。

「3部屋それぞれにベッドがあるから、好きに寝ていってよ。この時間からタクシーに乗って帰ると疲れるでしょ? シャワールームも2つあるし、好きに使って。タクシー代はあげるから、起きたらタクシーで帰りなよ」

 数々の合コンに参加してきたが、新しいパターンだった。だいぶ飲んでいたので、お言葉に甘えてナホと同じ部屋のキングサイズベッドで寝かせてもらったが、男性たちは入ってこようともしなかった。翌朝、本当にタクシー代をくれようとした。「それはさすがに…」とお断りした。

 この一件でナホはすっかりアメリカ投資家に夢中になり、後日2人で食事に出かけていた。そして再びマンションを訪れたらしい。

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