入管が警察の“敵”となる理由の一つは、入管の行う「臨検」にある。臨検とは入管の入国警備官が不法滞在者らの家などに立ち入り検査を行うもので、もちろん、それ自体は問題ない。しかし、警察が内偵していた外国人容疑者を、逮捕目前で入管が強制送還してしまうことも多々ある。
また外国人犯罪者の中には、窃盗などの犯行後、自ら入管へ出頭し、犯罪が明るみに出る前に帰国してしまう者も少なくない。こうした意味で、入管は警察の“敵”なのだ。
もう一つの“敵”が「万引きGメン」である。現在、増加傾向にあるベトナム人らによる集団万引きの場合、Gメンに捕まると、犯人は「言葉がわからなかった」などと言い訳して、代金を支払う素振りを見せる。警察沙汰を嫌う店側は「お金を払うなら……」と、見逃すことも多い。
一人が捕まれば共犯者は逃げてしまう。事件化すれば防犯ビデオを証拠として共犯者を検挙できるが、店側が通報しなければ、それは不可能だ。実行犯はおろか共犯者を一網打尽にするチャンスもなくなる。
このように見逃された外国人犯罪の数はどれくらいなのか、本当の数は警察にさえわからない。統計の数字だけでは外国人犯罪の実態をつかむことは到底できないのである。
【PROFILE】しみず・まこと/1960年兵庫県生まれ。佛教大学卒業後、兵庫県巡査を拝命。後に中国語のバイリンガル捜査官として外事警察、刑事警察など31年間奉職し、警部で退職。現在は一般社団法人関西司法通訳養成所の代表を務める。
●取材・構成/浅野修三(HEW)
※SAPIO2018年11・12月号