2010年ごろになると、「中身の見える」「中身がわかっている」福袋や「サイズ別に分けられた」福袋などが登場します。現在では各ブランドの福袋はどれもあらかじめ中身もサイズもわかっています。2000年頃に私が買ったような明らかに夏物の在庫の詰め合わせ福袋なんて売っているブランドはありません。もしあったとしてもちっとも売れないだろうことは容易に想像できます。
しかし、中身がわかった福袋が登場すると、「どうしてこんなにきちんとサイズ別に分けることができるのか?」という疑問も飛び出すようになりました。本来は売れ残りの在庫品を詰め合わせていたはずの福袋なのに、なぜか色柄別・サイズ別に整然と分けられて売られるようになっていたからです。
「そんなに都合よくサイズ別に在庫が残っているものなのか?」という疑問を抱く人が少なからず出てきたのは当たり前のことだといえます。
この疑問に対してアパレル業界から出された答えは、「福袋用に色柄別・サイズ別に商品を作っているから」というものでした。このカラクリはあっという間に広がり、少しでも衣料品に興味のある人にとっては今では常識となっています。
2019年の年初を飾る福袋の多くも同じカラクリで生産されています。どのアパレルブランドも福袋用に色柄別・サイズ別に生産して正月商戦に臨んでいるのです。
そのため、福袋の中に入っている商品はすごくお買い得かというとそうではありません。値段相応のコストで生産されています。たとえば5点で1万円という福袋があったとします。売れ残り在庫を詰め合わせた場合は別として、福袋用に作っているとしたら、単純に販売価格で元が取れるようなコストで製造されているのです。
5点も入って1万円と聞けばお買い得に感じますが、1点当たりの平均販売価格は2000円で、それでも利益が稼げるように製造原価が抑えられています。だいたい原価が30%程度だとすると600円足らず。そのクオリティが高いかどうかは言わずもがなです。