それでも試合中は、ミスを連発するとイライラして表情が曇ってくる。表情が豊かなだけに、ネガティブな感情がすぐにその目に表れる。コートにラケットを叩きつけそうになったり、身体を折り曲げ、叫んぶ場面もあった。3回戦で思わずラケットを投げつけてしまった時には、このまま崩れてしまうのだろうか?と、見ているこちらが心配になったほどだが、彼女は立ち直った。

 他の試合でも、感情に飲み込まれそうになる手前で、彼女はくるりとコートに背を向けた。目を瞑り、自分に何かを言い聞かせると、顔を上げて再びコートに向う。コートに背を向けるまではネガティブ感情一杯の暗い目をしていたのに、コートに向き直った時は明るく強い眼差しが戻っていたのだ。

 彼女のメンタルは、その時すでに4才になっていた。

 それにしても、驚くほどの成長スピードだ。大坂選手はあっという間に成長していく。人が精神的に成長していく様を、こんな形で目にすることなど滅多にない。すごいものを、素晴らしいものを目にしているのではないかとさえ思う。

 4才のメンタルといえば自発性が出てきて、色々なことを探求し始める時期。相手の心の動きを読めるようになってきたり、様々な課題を乗り越えられるようになることで自分への信頼感も生まれてくる。そのため、以前より動揺が少なくなる時期でもあるという。

 ここまでのインタビューでも、「以前には、負けを受け入れてしまうところがあった」「負けを認める気持ちだと勝てないと思った」と答えていたように、自分から勝負を諦め崩れてしまうところがなくなった。自分の力を信じ、自分に自信が持てるようになったのだろう。準決勝ではチェコのカロリーナ・プリスコバ選手をフルセットで破り、「信じられないような試合をした。素晴らしい選手」と称えられたほどだ。

 全米オープンテニスでセリーナ・ウィリアムズの選手を破って優勝したのは昨年の9月。表彰式で観客のブーイングに涙していた初々しい選手は、わずか数か月足らずで、トップアスリートとしての雰囲気を漂わせ貫禄さえも滲ませる。それにもかかわらず、まだ成長途中だ。

「自分にとって、一番の目標はこの大会で優勝すること」と決勝に向けた意気込みを語った大坂選手。頑張れ!!

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