──進学先も近畿だけではなく、関東の大学も増えてきて、好循環ですね。
狭間監督「うちに来た選手は他の高校にいった選手よりもしんどい思いはしますが、進学先も含めて良い経験をして、育っていって欲しいと思っています。就任当時は東京の大学で野球を続ける選手はいませんでしたが、明徳義塾で馬淵監督の元で指導していた事を認めてもらい、少しずつ進学先を増やして行きました。実際進学した選手達が大学選手権で活躍してくれたり、今は大学の方から来てくださり、嬉しい限りです。明石商業に来れば、進学先もあり、就職もでき、甲子園も目指せるということで、来てくれる中学生が増えてきました。いまも、4番を打っている安藤碧はオール5に近い成績を残しています」
──狭間監督の情熱の源は何でしょう。
狭間監督「勝利があるからこそ、厳しい練習に耐えることが出来ると考えています。私は、自分の事では動きませんが、生徒や自分の周りのことになれば、必死で動きます。それをやらなくなったら、(監督を)辞める時だと……。そのぐらい、引き際は大切にしようと思っています。野球の難しさや喜び、1人では出来ずに、仲間に頼ることで生まれる感動などをたくさん経験して欲しいです。だからこそ、『常に仲間からの信用や信頼を勝ち取るように』と言っています」
──監督としての信条はありますか?
狭間監督「7名のスタッフが休みなしで、生徒のために頑張ってくれています。英語教員が1人、社会教員が2人、残りが外部コーチになります。音をあげて辞めていく人が多い中で、残ってくれたコーチたちがいるからこそ、明石商業の野球ができています。
『思い続ける』と『人との出会い』がここまで大切にしてきたことです。思い続ければ、必ず道が拓けてきます。また、そこには人との出会いが必要となってきます。積み重ねることで、信用や信頼を勝ち取ることに繋がります。継続できることは才能、いかに続けることが出来るか。入部してきた1年生には、『3年生になってもベンチ入りできないこともある。それでも腐ることなく、すねたりせずにやり切れるか?』と、一人一人に尋ねるようにしています。だから、3年生になってメンバーに入れなくても、『自分の出来ることを一生懸命やれ』ということで、応援からグランド整備まで手伝ってくれます」
──初戦の相手は東京の国士舘高校に決まりました。2009年の清峰高校以来となる、公立校の日本一を狙う上で選抜の抱負をお願いします。
狭間監督「今年のチームは投手を中心とした守りのチームです。昨年の甲子園経験者18人中8人が残ります。投手陣は並より少し良い程度で、まだまだです。それを補う明石商業の特徴として、しぶとく打てる選手がいるので、『7回から野球が始まる』と言われるぐらいです。負けていても、追いつけるチームなので、恵まれているチームには負けるわけにはいきません!」
【PROFILE】
狭間善徳(はざま・よしのり)/1964年5月12日生まれ。明石南から日体大を経て、母校の明石南や高砂南でコーチ経験後、1993年から明徳義塾中学校野球部コーチを務め、同校監督として全国優勝4回を達成。2007年に明石商業野球部監督に就任。9年連続兵庫県大会ベスト8は最長記録。選抜甲子園は2016年に初出場すると、2015年から2017年まで3季連続で夏の県大会準優勝を経験し、2018年に悲願の夏初優勝を果たした。一昨秋、昨春、昨夏の西兵庫大会、そして昨秋と史上初の4季連続県大会優勝を記録し、県内公式戦連勝記録を「27」に伸ばし続けている。
古内義明(ふるうち・よしあき)/1968年7月7日生まれ。立教大学法学部卒、同時に体育会野球部出身。高校・大学球児向け「サムライベースボール」発行人として、これまで数百校の高校を取材し、アマチュア関係者と独自の人脈を構築。近著に、『4千分の1の名将 新・高校野球学【関西編】』(大和書房)がある。(株)マスターズスポーツマネジメント代表取締役、テレビやラジオで高校野球からメジャーリーグまで多角的に分析する情報発信。立教大学では、「スポーツビジネス論~メジャーの1兆円ビジネス」の教鞭を執る。