出汁と並行して、その日の蕎麦の準備が進む。細川さんは玄蕎麦を仕入れ、店内で脱穀し、石臼で製粉する。
「旨い蕎麦にするためには国産のいい原料を使うことは必須。あとは、切れる石臼で挽くこと。石臼が挽けないと十割蕎麦はつながらない」
石臼の切れ味が落ちたと思ったら、すぐにメンテナンスに出す。それぐらい石臼には神経を尖らしている。
蕎麦粉を水回しで一気にまとめた細川さんは、のし棒を手に鬼気迫る勢いで延し、たたみ、正確に切っていく。この間わずか15分足らず。
ひととおりの準備を終えて、ほっと一息つくのが午前10時すぎ。ようやく弟子と2人で朝食にありつく。朝食前の仕込みの2時間半こそが「ほそ川」の生命線なのだ。
16歳で料理の道に入った細川さんは、鮨屋、割烹などで働いたあと、埼玉県で蕎麦屋をオープン、2003年、築地市場に近い場所を求めて現在地の東京・両国へと移ってきた。
細川さんは、蕎麦だけでなく、料理に対しても力を注ぐ。いまは天ぷら中心の構成だが、「焼きみそ」などのつまみもすべて旨い。自身もまた料理に目がなく、暇を見つけては、和食、フレンチ、イタリアンと食べ歩いてきた。