その直前の5月30日、監事の藤岡千代美氏は、不透明な受託の流れについて阿部会長に質した。
この日の監査のため、藤岡氏は事前に北海道博報堂の担当者と面会し、札幌アイヌ協会およびメノコモシモシへの事業委託の経緯を確認していた。
「博報堂は『札幌アイヌ協会の窓口である多原さんに相談した結果、メノコモシモシに再委託した』と仰る。そうだとすれば、副会長の立場を利用した不当な行為というほかない」(藤岡氏)
北海道博報堂は、本誌の取材に対しても「札幌アイヌ協会に相談した結果、メノコモシモシと作業を進めることとなった」(博報堂グループ広報室)と説明している。
ところが、藤岡氏がその点を指摘すると、阿部会長は激高したという。その録音データには、「どうして勝手に博報堂に行くんだ!」「俺はあんたを監事とは認めない」「誰と博報堂に行ったんだ、1人じゃねぇだろ」など、1時間以上にわたり阿部会長が声を荒らげる様子が記録されていた。
数日後、阿部会長が監査終了を待たずに書面総会資料を送付したため、貝澤氏らは理事の過半数が署名した「理事会開催の要請書」を郵送し、「書面総会の無効申立書」を手渡した。しかし、阿部会長は「過半数の会員が承認したため書面総会は有効」と主張して、8月24日現在まで理事と会員を招集しての総会開催を拒み続けている。