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杉咲花、コロナ禍の朝を活気づける演技力 ベテランとも対等に渡り合う

(写真/公式HPより)

最近の朝ドラには人気俳優が起用される(写真/『おちょやん』公式HPより)

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『おちょやん』。平均視聴率は18%前後と歴代の朝ドラと比較するとそれほど振るっていないようだが、視聴者の評価は上々。特に、ヒロイン・竹井千代を演じる杉咲花(23才)に魅了される人が続出中だ。映画や演劇などに詳しいライターの折田侑駿さんも、杉咲の好演に魅せられた一人だ。

 * * *
 歴史ある「朝ドラ」103作目となる『おちょやん』は、昭和を代表する女優・浪花千栄子の生涯をモデルにしたもの。明治末期、大阪の貧しい家に生まれたヒロイン・竹井千代は、9才にして道頓堀の芝居茶屋に女中奉公に出されることになる。見習いの「おちょやん」として働くうち華やかな芝居の世界に魅了され、自身も女優の道を志し、やがて「大阪のお母さん」と呼ばれる大女優へと成長していく姿が描かれている。

 多くの映画ファンにとって、浪花千栄子は偉大な存在だ。『山椒大夫』や『二十四の瞳』など、今も語り継がれる数々の作品に出演し、映画やドラマに欠かせない名脇役として活躍した大物女優である。そんな稀代の演技者であり、壮絶な生い立ちを持つ彼女を演じるのは並大抵のことではない。だが筆者は、放送開始前から「杉咲花なら期待できる」という関係者の声をあちこちで耳にした。過去作で今回のような役どころを演じていたわけでもないのに、多くの人がそう口を揃えるのは、杉咲の俳優としてのポテンシャルが広く認められている証だろう。

 朝ドラと言えば「若手俳優の登竜門」と言われるだけあり、「視聴者が新人俳優を応援する」という“図式”のようなものがある。だが最近は、『スカーレット』(2019年)の戸田恵梨香(32才)や『エール』(2020年)の窪田正孝(32才)のように、名実ともにすでに広く知られている俳優が、オーディションではなく製作側の決定で主演を務めるケースが目立ち、これまでの図式が崩れているように思う。今作の杉咲も例外ではなく、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)などの代表作を若くして持ち、数々の賞も受賞している。

 長期間の撮影や物語を通して俳優が成長する姿を見られるという朝ドラの“醍醐味”が薄れたような気がして、筆者は少し寂しさを感じていたのだが、今作の杉咲を観てその考えは吹き飛んだ。ドラマが実際に始まると、杉咲はドン底から這い上がるヒロインを登場回から見事に演じており、新人俳優にはできない的確で巧みな演技術によって、視聴者がヒロインを応援するように導かれているような気持ちにさせられるのだ。

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