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綾野剛主演『ヤクザと家族』 藤井監督が語る「血を超えた絆」

壮絶な暴行を受け、命からがら生還した“ケン坊”の頭をやさしくなでる。おやじの「頑張ったらしいじゃないか」の言葉は舘の提案から生まれた

壮絶な暴行を受け、命からがら生還した“ケン坊”の頭をやさしくなでる。おやじの「頑張ったらしいじゃないか」の言葉は舘の提案から生まれた(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

 日本アカデミー賞で最優秀作品賞など、主要3冠に輝いた『新聞記者』(2019 年)の製作陣が、また話題作を世に送り出した。映画『ヤクザと家族 The Family』(1月29日公開)だ。1999 年、2005 年、2019年と激動の3つの時代を舞台に“ヤクザ”として生きることを決めた男(綾野剛)と、彼を取り巻く世界を「家族」の視点から描いている。

「ヤクザを通して、社会からこぼれ落ちた人に厳しい時代になっている現状を描きたいと思いました。また、任侠の世界は義理や人情といった絆や礼節を重んじるイメージもあり、いまや昔気質な古い価値観かもしれないけれど、人間関係において意味もある。

 どんな人にも自分を生んだ家族がいて、映画の〇〇組や俳優の石原軍団など、疑似家族のような単位が社会にはあります。家族というテーマを入れて、血を超えた人たちで結ぶ絆を脚本へ込めました」

 そう、藤井道人監督は語る。綾野演じる身寄りのない山本賢治を“ケン坊”と呼んでかわいがり、「組織=ファミリー」の一員として迎え入れる“おやじ”こと柴咲組の組長を演じるのは、舘ひろし。疑似家族であれ、父と子の心の絆が温かく映る。藤井監督が真っ先に“おやじ”に求めたのは厳しさよりも、父のやさしさ。

「僕自身も親としてそうありたいと目指す、寛容してくれる受け皿のような父親像です。立っているだけで佇まいがやさしい、それでいてキュートな人間味のある親分を舘さんは演じてくださいました。

 綾野さんは不器用さなど、どこか精神に共通するものを抱えて役へ入り込んでくれた。若い時代のやんちゃな魅力とは違う、いまの綾野さんだからこそ出せる深みを賢治に投じてくれました」

 劇中ではさまざまな場で抱擁やポンポンと頭をなでる光景が見られる。言葉に尽くせない想いや愛情をありったけ込めた男たちの無言の会話も、今作品の象徴的なシーンになったと、藤井監督は明かす。

「賢治は本当にたくさんの人間を抱きしめ、抱きしめられる。2019 年の撮影時には意識をしていませんでしたが、コロナ禍で人との距離を取らざるを得ない世の中になった。肌と肌との触れ合いを感じられる温もりがいまの時代には必要だなと、感じています」

 男たちの世界で光となるのが女たち。賢治に家族という居場所を与える由香を尾野真千子、賢治や柴咲組の男たちが通う食堂を仕切る愛子を寺島しのぶが演じている。愛子の店はオモニ(韓国語で“おかあさん”)食堂というだけあり、母なる大地のような安心感は、男たちが求める理想の女性像とも感じられる。

「世の男はほぼマザコンですからね(笑い)。男性たちがどこまでも愚かで弱い生き物だと描いていく中で、ドーンと受け止めてくれる揺るぎない存在として、愛子の強さはとても頼もしかった。寺島さんも尾野さんも力強く凜とされていて、おふたりと作品が作れて幸せでした。柴咲組の若頭だった夫を亡くした愛子は男性社会では見守ることしかできないけれど、ずっとそこにいて見届ける、水先案内人の役目もありました」

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