創業家2代目時代にぱたりと止まった成長

 これを可能としたのが植村伴次郎の絶妙なバランス感覚だったという。

「伴次郎氏はかつて、『クリエーターが存分に腕を振るえる環境を用意する。ただし、自由にやらせすぎるとコストがかかる。その兼ね合いをどうするかを考えることが重要』と語っていた」(経済誌記者)

 その後、2010年には伴次郎の長男、植村徹が社長に就任する。「徹は学生時代から仕事を手伝うなど、父の背中を見て育ってきた」(前出の記者)という。

創業者の長男で2010年代に社長を務めた植村徹氏(故人)

創業者の長男で2010年代に社長を務めた植村徹氏(故人)

 そして同時に、長女の夫で徹の義兄となる二宮清隆を副社長に据える。その際、伴次郎は徹に「二人でタッグだよ、二人合わせて一人前なんだ」と諭したという。裏を返せば、自分の息子に100%の信頼を持てなかったということだ。

総務省接待の責任を取って社長を辞任した二宮清隆氏

総務省接待の責任を取って社長を辞任した二宮清隆氏

 事実、2010年代、東北新社は成長を止める。インターネットの普及により、マーケティングの手法が大きく変わり、その影響は東北新社の稼ぎ頭であるCM制作にも及んだ。

 また放送事業も、ネットフリックスなどの定額サービスが普及し、加入者も減っていった。本来、こうしたデジタル時代に対応するために若い世代を社長に登用したはずだが、思ったような結果は残せず、かつては750億円あった売上高は600億円前後にまで低下する。

 収益の柱を増やそうとコンテンツの知的財産ビジネスにも力を入れたが、サンダーバードと、権利を買収した「宇宙戦艦ヤマト」以上のものを生み出すことはできず、狙いは不発に終わる。

 加えてデジタル対応投資でコストが増えたこともあり、2019年3月期には最終損益が赤字に転落、その責任を取って徹は辞任、二宮が社長に昇格した。

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