参考人招致の新社長はCM業界の有名クリエーター

 ここから植村家の悲劇が始まる。

 同年10月、創業者の伴次郎が死去。90歳だったから大往生といっていいが、それから半年後の2020年4月、今度は徹が58歳の若さで急死する。東北新社では死因を明らかにしていないが、『週刊新潮』ではコロナ死と報じていた。そして今年に入って総務省接待が明らかになり、国家公務員倫理規定に反する行為を行った責任を取って二宮が辞任した。

 現在、東北新社のボードには、伴次郎の甥が取締役常務執行役員にいるが、すでに65歳ということもあり、東北新社全体の舵取りをする立場にはない。つまり、二宮の辞任によって、植村一族による同族経営は終わりを告げた。

 二宮に代わって副社長から社長に昇格したのは、接待問題をめぐって衆参両院の予算委員会で参考人招致された中島信也(62歳)である。

国会に参考人招致された中島信也新社長(時事通信フォト)

国会に参考人招致された中島信也新社長(時事通信フォト)

 中島はCM業界では知らぬ人はいないほどの存在で、前述のカップヌードルのCMも中島が制作した。原始人やマンモスの出てくる「hungry?」シリーズのCMで日本人初のカンヌ国際広告祭グランプリを受賞している。

 ただし、クリエーターとしては優秀でも、経営者としての手腕は未知数だ。そこで「カギを握るのが副社長の伊藤良平だ」というのは東北新社のあるOBだ。

「中島はCMのプロだが経営の素人。でも伊藤の管理能力が高いので問題はない。むしろ、一番競争力のあるCM制作をこれまで以上に強化すれば再建もできるのではないか」

 植村家の義兄弟による二人三脚経営はうまくいかなかったが、今度の二人三脚は果たしてどんな結果を生むのだろうか。

(敬称略)

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