佐野さんの言葉はかっこいい。『死ぬ気まんまん』(光文社)など、すばらしいエッセイを多数残している。
「私ね、嫌なところがない人と長続きしないの」
初めからこういうふうに思ったら、どんな友だちともつきあっていける。
「立派な尊敬に値する友人だけを持っていたら、私は何と貧しい土に生きている生き物だろう」
「おばさんで何が悪い」と開き直っている。好きな人に宛てた手紙に、雪の上におしっこして詩を書いた話まで書いてしまったという。そしたら、「あなたが好きです」と返事が来た。それが、詩人の谷川俊太郎さん。こうやって2人は結婚。6年ほど連れ添い、離婚した。
父親から「命と金は惜しむな」と言われてきた。その言葉通り、惜しみなく高級車を買い求めた。車庫入れが苦手な彼女は、美しいブリティッシュグリーンの車体を、すぐにボコボコにした。佐野さんなら、このボコボコの傷さえも、生きている証拠だと笑い飛ばしたことだろう。
人生のたけなわは、後半戦にやってくる
散会を告げる決まり文句に「宴もたけなわですが……」というのがある。「たけなわ」は漢字で「酣」と書く。「真っ盛り」という意味である。
人生も、肉体的な盛りが過ぎ、終わりを予感するからこそ、生の輝きを求める“たけなわ”がやってくる。だからこそ、ご同輩たちの新たな挑戦や軽やかな生き方には拍手を送りたい。
【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2021年4月9日号