日本ハムとのシリーズでは、江川が初戦で黒星を喫す。西本はそれを見て「チャンスだ」と発奮し、2試合を投げて完投と完封。シリーズMVPを獲得した。
1987年に江川が突如引退するまで、2人のライバル関係は続いた。
「江川さんの引退には腹が立った。最後までシーズンの勝利数では抜けませんでしたから。最大の目標がいなくなり、大きな虚脱感があった」(西本)
当時の巨人で江川・西本とともに“三本柱”の一角を担った定岡正二氏が言う。
「江川さんの身体能力は物凄かった。球速だけでなく、100メートル走なら“青い稲妻”の松本匡史さんより速かった。あれほどの才能は、努力や根性で太刀打ちできるものではない。それでも西本がライバルになり得たのは“これと決めた時の頑固さ”があるから。周囲とぶつかることも多かったが、あの意志の強さこそ才能です。あの時代の巨人の選手たちは、みな個性の塊でした」
※週刊ポスト2021年4月30日号