◆石川三千花さんのセレクト
・キュンとできる映画
『ラ・ラ・ランド』
夢を抱いてLAにやってきた男女の恋と別れを描いたラブストーリー。監督:デイミアン・チャゼル、出演:エマ・ストーン、ライアン・ゴズリングほか。2016年・米。128分。
【おトク値!】ブルーレイ&DVD 発売中、ブルーレイ2750円、DVD1980円。発売元:ギャガ、販売元:ポニーキャニオン。
・スカっとできる映画
『グロリア』
ギャングに家族を殺された少年と、少年の母親である親友に彼を託されたグロリアが、一味に追われながら家族のような絆を結んでいく逃走劇。監督:ジョン・カサベテス、出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・アダムスほか 1980年・米。121分。
デジタル配信中。DVD1551円。発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。
最初に観たときから、グロリア(ジーナ・ローランズ)は、私にとってかっこいい女の代表。苦み走った中年女で、決して美人じゃないけれど、ウンガロのドレスにハイヒールを履き、バッグに拳銃を忍ばせて1人で組織に立ち向かっていく姿は惚れ惚れする。大物ヤクザの元情婦で、1人で生きてきた女性だから、親友から幼子を託されるときの「子供は嫌いなのよ、特にあんたの子はね」というせりふも最高。
そう言いながら命がけで子供を守り抜くんだから。また、元カレに「お前、母性本能に目覚めたのか?」と聞かれたとき「あの子は私が寝た若い子の中でも最高なのよ」とか、いちいち気の利いたこと言うのよ! 後にシャロン・ストーンがリメーク版で同じ役を演じるけれど、内面の演技力が全然違う。ジーナは永遠にいい女のアイコンね。
キュン死映画なら、断然『ラ・ラ・ランド』。何者でもない男女が出会って別れて再会するというありがちな話だけど、2人の心の機微を、ミュージカルという形で丁寧に描いていく。あんな直球のラブストーリーは意外となかったから、みんな「待っていたのはこれなのよ〜!」と思ったんじゃないかな。
私の息子は、「なんでハッピーエンドじゃないんだ」って言うけれど、本当に好きな人とは結ばれず、別々の道を選ぶってこと、大人だったらよーくわかるじゃない? ラストの「もし2人が別れていなかったら」と想像するシーンで、観客も悶絶するけれど、現実はそうはならない。それが人生だもの。
2人が踊りながら空に舞い上がる有名なシーンも、ロマンチックで空想的な美しさだった。超絶ウットリですよ。
【プロフィール】
石川三千花さん/イラストレーター、エッセイスト。独自の視点で映画やファッションの魅力を伝えている。著書に『石川三千花の勝手にシネマ』(文藝春秋)、『石川三千花の勝手にオスカー』(集英社)ほか。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2021年5月6・13日号