ライフ

『報ステ』キャスター・大越健介氏インタビュー「悩んだり、堂々巡りする姿を見せることもキャスターの仕事の1つだと思っています」

大越健介氏が新作について語る(撮影/村井香)

大越健介氏が新作について語る(撮影/村井香)

 2021年10月4日の『報道ステーション』初登板以降、大越健介氏(62)は週末に1週間の出来事を振り返り、番組HPにコラムを書くことを習慣としてきた。いうなれば『ニュースのあとがき』である。

「自分が伝えたニュースを、土日を使って心の中で発酵させるんです。そうすると番組では言い足りなかった部分や理解の甘かった部分が見えてくるんですね。そのうち、コラムを書くなら猫や家庭菜園や自分の話ももうちょっと入れてみようとか、書くことがどんどん楽しくなっていきました」

 その中から計71篇を集めた本書『ニュースのあとがき』(小学館)では、地震や戦争、オリンピックやWBC等々、硬軟様々な出来事を読者もまた追体験することになる。しかも週末に書くからだろうか。番組でも早急な結論をあえて避けるかに映る著者の筆はより思考の淵を行ったり来たりし、そんな主に愛猫コタローくんが絶妙な茶々を入れる、〈ニュースと現場と、ときどきネコと〉な日々の記録である。

「僕は東大で野球ばかりやっていて、文学や国文を学んだ記憶は皆無に近いんですが、元々書くのは好きですね。スタジオでのコメントも下準備は必要ですし、言葉を選んで伝えるという基本動作はキャスター業も文章も一緒。このコラムも毎回生放送と同じくらいの集中力で書いています」

 例えば2021年10月16日付の〈「ワカモノ」を考える〉。NHK岡山の新人記者時代、大越氏は警察発表を原稿にそのまま落とし込む仕事に違和感を覚えた経験から、自ら衆院選目前の渋谷へ。俗にいう若者の政治離れや投票率の低さに関する生の声を拾い集めた上で、〈彼らは別に若者という記号で生きているわけではない〉と、むしろ「若者」や「分断」といった便利で安易な言葉自体を疑ってかかるのだ。

「もちろん記号化した方が理解は楽です。ただしその危うさも知らないと世界は1つの色に染まりかねないという思いが年々強くなっていて。世の中には言葉やレッテルで括れない現象が山ほどある。その複雑さに背を向けて何かを言い切る罪深さを僕らは日々感じているし、自分が悩んだり、堂々巡りする姿をお見せするのも、僕はキャスターの1つの仕事だと思うんです。

 要はわかったような人になりたくないんですよね。特に最終走者に回った今は、取材対象や作り手の思いも全部受けとめて話す以上、その過程や途中を軽んじるような発言はしたくない。ただし番組的には一定の着地も必要だというギリギリの線を今も模索中です。とにかく自分の分析や識見に自信がないんです(笑)」

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン