吉野氏は、難関私立大学への進学と東大進学は大きく異なると指摘する。
「例えば数年前に『ビリギャル』が話題になりましたけど、主人公が慶應義塾大学の総合政策学部、いわゆるSFCに進学しますよね。あそこは極端に言ってしまえば英語さえできれば突破できる可能性が高くなるんです(英語と小論文の2科目で受験可能)。
けれど東京大学は共通テストがあるので、全ての科目でまんべんなく良い点数を取らなければならない。そう考えると、1年間で全部の科目の偏差値を一気に上げるというのは、やっぱり難しい。なので『ドラゴン桜』を真に受けないほうがいい。もちろん、モチベーションを上げるために観る分にはいいですけどね」
一方、「THE世界大学ランキング」で2005年に16位だった東京大学は、2021年には36位へと下落。日本を除くアジア各国の大学が台頭するなど、“東大進学”の価値そのものが変遷していることもある。この16年間の変化について、吉野氏はこのように語る。
「2005年と比べると、最近の傾向としては進学後に両極端に分かれてしまう印象があります。つまり、明確に目標を持って進学する人もいるけれど、特に大学でやりたいことがあるわけではなくて、受験が終わるとそれで終わりだと考えてしまう人も増えてきた。その両極端に分かれてしまっているんですね。
世界のランキングで東大の位置が変わっても、今の日本は結局、学歴社会なので、やっぱり東大ブランドは強い。学歴がいいに越したことはないですからね。ただ、学歴だけで終わらず、そのブランド力を利用してその後の人生を有意義に過ごして欲しい。何のために大学進学するのか、受験する前に考えた方がいいと思います」
“東大進学”の価値は変わらない面があるようだ。『ドラゴン桜』の続編が放送されることで、また東京大学への進学を目指す受験生が増えるかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)