時代遅れな「平成型」湾岸タワマンの豪華施設

 東京の湾岸エリア(江東区の豊洲、有明、東雲と中央区の晴海、勝どき、月島)でタワマンの開発ブームが沸き起こったのは2000年頃からである。その頃の湾岸は、どちらかというと東京の僻地。人が住むというよりも「工場や倉庫がある地域」というイメージが強かった。

タワマンが多い晴海、月島の街並み(東京都中央区/時事通信フォト)

タワマンが多い晴海、月島の街並み(東京都中央区/時事通信フォト)

 そんな場所で大量の新築マンション住戸を売ろうとするデベロッパーは、とにかく広告でイメージチェンジを図ろうとした。手っ取り早いのは、イメージキャラクターに有名タレントを起用することである。マドンナ、黒木瞳、新庄剛志など、誰でも知っているような有名タレントが次々に起用された。

 さらに、マンションの周りには何もないエリアだったので、敷地や建物内に豪華施設を盛り込んだ。屋外なら子どもの遊び場やバーベキューコーナー、建物内にはスポーツジムやミニショップ、バー、パーティルーム、シアタールームなどに加えプールや大浴場を設置したタワマンも少なくない。

 ただ、それらの維持費用は管理費で賄われる。湾岸タワマンの管理費や修繕積立金はただでさえ割高になっている。

 湾岸タワマンが盛んに分譲されていた2000年から2010年代の前半まで、管理費+修繕積立金の標準的な水準は平米当たり400円前後であったが、湾岸では600円超が普通だった。豪華施設の維持費分がそっくり高くなっていたのだ。

 これらの豪華施設は、新築から10年くらいはあまり問題にならないが、20年、30年となると大きな負担となる。特にプールや大浴場は維持費が年間数千万円に達する。しかし、利用者は一部の人々に限られるのでマンション内に不公平感が生まれる。管理組合の運営上、大きな負担になることは間違いない。

 最近開発された湾岸のタワマンでは、プールや大浴場を設置するケースはほとんど見かけない。開発側もそのデメリットに気付いたのだろう。しかし、既存の中古タワマンは、これから老朽化するプールや大浴場をどうするのかという困難な出口問題に取り組まねばならない。

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