一昔前から格段に進化した「食品の安全性」
昔に比べると、調理されたお弁当などの販売は大変進化している。コンビニエンスストアなどでは消費期限に厳格で、仮に誤って置かれていた期限切れのものを持っていくとレジではじかれる。食品ロスの問題は置いておくとして、前述した食品の安全性という点では一昔前と比べものにならないくらい進歩している。
そんな背景もあり、客室への飲食物持ち込みは今でも“基本的にNG”というホテルは多いが、次第にそうした約款やルールは形骸化しているといえる。特にひとり泊のシーンでは、ダイニングレストランの利用は様々な意味でハードルが高いだろうし、部屋でひとりご飯が落ち着くという声も多い。
とあるシティホテルの担当者は、「表立って推奨はできないが、事実上容認しているし、食事の入っているポリ袋を持ってロビーを行き来する光景はもはや当たり前」と話す。「いちいち注意するのはナンセンスでこちらが非常識になる」とも。
高輪はホテルテイクアウトグルメの「ホットエリア」
そのような近年の“ホテル部屋食”の実情であるが、このコロナ禍ではNGどころかホテル側が積極的に推奨しているケースも目立つようになった。
ホテルクオリティの食事といえば“お高い”イメージだが、ホテル内のレストランが営業時間や規模など限定的になるのに従い、テイクアウトに注力する光景も当たり前になっている。ホテルクオリティの食事を自宅でという前提でもあるが、客室へそのまま持ち込めることは言うまでもなく、何より“スープの冷めない距離”というのは嬉しい。リーズナブルなメニューも増えており、コンビニ弁当にはない大きな魅力となっているのだ。
だが、シティホテルのテイクアウトメニューはスイーツやパンが定番で、きちんとした食事のテイクアウトとなると意外に少ないのが現状。そんな中、都内のシティホテルで筆者が注目しているのが、高輪エリアのプリンスホテルだ。
「グランドプリンスホテル新高輪」で人気の「中国料理 古稀殿」は、高級中国料理として知られるが、同店を代表する3種類(五目あんかけ・海老のチリソース煮・麻婆豆腐)が弁当として1200円で販売されている。何より嬉しいのがオーダーを受けてから作られることだ。その他、弁当以外でも高級単品メニューのアラカルトも充実している。リーズナブルから高級料理まで、その幅広さも魅力だ。
また、隣接するザ・プリンス さくらタワー東京では、イタリアンの銘店「リストランテ カフェ チリエージョ」でピザのテイクアウトができる(ピザ マルゲリータ/2750円など)。高輪はホテルテイクアウトグルメの密かな“ホット”エリアだ。こんな食事メニューが揃っているなら、本末転倒ではあるが是非泊まってテイクアウトしたくなってくる(いずれも料金は税込み)。