予防といえば「適度な運動」だったが…(イメージ)

予防といえば「適度な運動」だったが…(イメージ)

効果は限定的?

 ただし、薬の服用には必ず「副作用」のリスクが伴う。

 日本糖尿病学会は「SGLT2阻害薬」の服用で体内の水分量が減少し、のどの渇きや立ちくらみ、めまいやふらつきといった「脱水症状」が起こることを指摘している。高齢者の場合、糖尿病患者であっても服用には注意が必要だ。

 特に利尿剤を併用している患者は脱水症状に気づきにくく、適切な水分補給をしないと倒れてしまうこともある。

 長澤氏はそうしたリスクを理解した上で予防のための服用のメリットをこう語る。

「たしかに副作用のリスクはありますが、糖尿病で人工透析になれば薬の服用以上に負担が大きくなる可能性もある。

 現在、日本では予防医療はすべて保険適用外ですが、将来的に病気になる人が減れば国が負担するコストを大幅に抑えられるはずです。効果とリスクを正しく検証した上で、保険適用にするための議論は必要なのではないでしょうか」

 一方、朝長医師は安易な服用に警鐘を鳴らす。

「減量のために医学的根拠がない段階で副作用リスクのある薬を服用するのは危険です。

 たしかに糖尿病の予防の観点から見て、適正体重を維持することは効果があります。ですが、SGLT2阻害薬は最初こそ体重が大きく落ちますが、服用を続けていると半年ほどで徐々に効果が下がる傾向がある。これは薬に慣れて体に耐性ができるからだと考えられます。やはり予防の基本はバランスの良い食生活と、適度な運動を心がけることです」

 自費診療では重篤な副作用が生じた際に、医療費の給付などの救済が受けられない恐れもある。

 厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の医薬品副作用被害救済制度では、〈医薬品等の使用目的・方法が適正であったとは認められない場合〉は救済措置の対象外となる。

 予防目的で使用することに対して、製造元はどう考えているのか。日本国内で最初に市販されたSGLT2阻害薬「スーグラ」を販売するアステラス製薬はこう回答した。

「本剤は医師により患者様の状態をご確認いただいた上で、承認を受けた範囲内で添付文書に従って適切に処方・使用されることを目的とした医薬品です。今後も医療関係者の皆様に適正な使用情報の提供に努めます」(広報担当者)

 今後、医療界の新常識になりうるか──。

※週刊ポスト2021年7月9日号

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