しかも、彼女の場合、新たに副編集長としてやってきた長谷部宗介(中島健人)は、忘れられない初恋相手。その彼は彼女に気づかず、「プロ意識のない人間は必要ない」などとキツイ言葉をぶつけてくるのである。モノを運んだり、飲み物を用意したり、コツコツ校閲したり。リモート、在宅ワークじゃできない人の手ですることばかり。上司の言動はほとんどパワハラだ。
『半径5メートル』でも週刊誌のトップ記事の取材は、長時間、タレントを張りこみするのも当たり前。やはり週刊誌を舞台にした2007年のドラマ『働きマン』(菅野美穂主演)のころと、まったく変わっていない。
「いい誌面を作る」という目標のため、無理も理不尽も罵詈雑言もまかり通る。しかし、その大変さこそが、ドラマの源。加えて、医療が人を救うように、刑事が犯人を逮捕するように、編集者は「紙媒体は廃れた」といわれる苦境の中で、部数を伸ばすという「結果」を出せる。編集者ドラマの強みだ。
漫画家やデザイナーなど、登場人物に超個性的なキャラがたくさん出せるのも強みと言える。『彼女はキレイだった』はLiLiCo、『オー!マイ・ボス』は菜々緒、『半径5メートル』は真飛聖。今年登場した編集長も、なかなかの迫力。彼女たちのドーンとした強さもドラマを支えていることは間違いない。「ザ・モスト」誌面で鼎談してほしいくらいだ。