メーカーの見解は?
昨年来のコロナ禍では、全国的に「受診控え」による健康悪化が指摘された。岩手県保険医協会の調査では、県内の歯科医師(開業医)の68%が「受診控えで症状が悪化したと思われる事例がある」と回答。なかでも歯周病の悪化が最多だった。沼部教授が言う。
「口から吐いた歯磨き粉に血が混じっているのに気づいても、歯科医院に行かずにいきなり電動歯ブラシで対処しようとするのは、かえって逆効果になる場合があります。正しい歯磨きによるプラークコントロールができれば、初期の歯周病は治すことができる。まずは、歯科医に相談すべきです」
電動歯ブラシを製造・販売するメーカーは、学会が指摘した歯周病へのリスクをどう考えるのか。大手3社に訊いたところ、使用に際してはいずれも「かかりつけの歯科医など専門家に相談し、歯磨き指導を受けることを推奨します」としたうえで、以下のように回答した。
「歯周病の手前の歯肉炎のケアという点での歯垢除去に関して、弊社製品はデータに基づき、手磨きより歯や歯茎に優しく、しっかりと磨けると考えております」(フィリップス・ジャパン ブランドコミュニケーション部)
「弊社製品には押し付け防止センサーが付いており、押し付けすぎを抑制できます」(ブラウン・ブランドを展開するP&Gジャパン広報)
「歯科専門家の『電動歯ブラシは隅々まで磨けない』との考えは重く受け止めている。隅々まで磨けることを念頭に日本人の口に適したブラシを開発し、2020年秋に発売した電動歯ブラシでは、『薄ヘッド』『細ネック』のブラシ形状を採用し、毛も細かい隙間に入りやすい極細毛を使用したものを多く取り揃えている」(パナソニック コーポレート広報部)
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号