芸能

時代性を反映した歌 石川さゆりが語る阿久悠さん『津軽海峡・冬景色』

阿久悠さんとの作品づくりの思い出を語る

阿久悠さんとの作品づくりの思い出を語る

 数々の名曲を生み出してきた、作詞家・阿久悠さん。石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』はその代表作のひとつだ。「阿久先生の詞には時代性とともに行間がたくさんあるんです」と語る石川が、阿久悠さんとの作品づくりの思い出について語った。

 * * *
 私が高校を卒業した1976年、阿久悠先生と作曲の三木たかし先生がコンビを組んで『365日恋もよう』というアルバムを作ってくださいました。『津軽海峡・冬景色』はその中の1曲でしたが、お客様からの反響が大きく、1977年の元日にシングルとして発売。デビュー5年目にして初めての大きなヒットになりました。

 阿久先生は常に時代を見据えて歌を作っていらっしゃいましたが、当時は「ウーマンリブ」が叫ばれていた時代。2番の歌詞のように、女性が自分の意思で行動する『津軽海峡~』は、耐え忍ぶ女が多かった従来の演歌とは違う、阿久先生ならではの作品でした。

 ヒットを喜んでくれた先生は「次はさゆりが故郷に錦を飾れる歌を書いたからね」とおっしゃったのですが、いただいた詞のタイトルは『能登半島』(1977年)。私の名字から石川県出身だと勘違いされたようです(笑い)。でもその翌年には私の故郷・熊本を舞台にした『火の国へ』を書いてくださって、やはり三木先生とのコンビでミュージカルも作ってくださいました。

 私が30代になってからは阿久先生のご自宅にお邪魔して、いろんなお話をしながら歌づくりをするようになりました。その頃、先生はある企画の打ち合わせでスタッフの顔をひとりひとり見て「共犯者はこれで揃ったね。さあ、事件を起こすぞ」と。いかにも先生らしい言葉だなぁと思いましたね。

 先生の詞には時代性とともに行間がたくさんあるんです。だから歌い手も、聴く人も、それぞれの中にある景色や想いを重ねていける。たくさんの歌を書いていただきましたが、思い出深いのは『転がる石』(2002年)。先生の自伝的作品ですが、「さゆり、君は何があっても落ち着くことなく、転がり続けていきなさい」というメッセージを込めてくださったのだと思っています。

【プロフィール】
石川さゆり(いしかわ・さゆり)/熊本県出身。1973年にデビューし、『津軽海峡・冬景色』などヒット曲多数。8月18日に129作目のシングル『獨り酒』をリリース。来年3月に歌手生活50周年を迎える。

取材・文/濱口英樹

※週刊ポスト2021年8月13日号

関連記事

トピックス

ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト