女性州兵になってまだ日が浅かったが、突然、護衛官にさせられた女性。
「イベントに出席した知事が、エレベーター内で私の背中を首から背骨に沿って指で触り、『ねえ、君』と囁きました。また、『理想のガールフレンドは、僕の痛みを癒やしてくれる女だ』とも言っていました」
今も知事のオフィスで働いている女性秘書の一人。
「2020年、知事官舎に呼び出され、二階の部屋に誘い込まれました。彼はブラウスの中に手を突っ込み、胸を触りました。勤務中は、いつも私の体をいやらしい目で見ていました」
報告書には、クオモ氏が証言した女性たちをレイプしたかどうかは書かれていない。しかし、アメリカの法律に照らせば、訴追するには十分な内容である。ニューヨーク州知事といえば、大統領を狙ってもおかしくない政界の大物だ。しかも同氏の父親はニューヨーク州史上最も評価されている知事の一人である故マリオ・クオモ氏で、故ロバート・ケネディ上院議員の三女、ケリー・ケネディさんとは16年間連れ添った(2005年に離婚)。まぎれもなく「民主党のプリンス」だった。
ニューヨーク政界を長年取材してきた地元紙のベテラン記者はこう語る。
「ドナルド・トランプ前大統領もクオモ家には一目も二目も置いていた。地位も名声も手中に収めていたクオモの将来は青天井だったのに……。お触り癖やセクハラ発言は、もはや依存症のようなもので、本人もやめられないのだろう。とんだ落とし穴に落ちたものだ。これで来年の知事選は混戦になった。クオモ氏を刺したジェームズ司法長官も出馬に意欲満々と言われている」
ジョン・F・ケネディといい、ビル・クリントンといい、どうも民主党のスターには女癖の悪い政治家が目立つ。共和党でもトランプ氏はセクハラ常習者だったが、あれだけいろいろスキャンダルがあると、セクハラは目立たなかった。これも政治の皮肉というべきか。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)